金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年01月01日

インヒビター保有血友病とバイパス製剤併用療法?


血友病にインヒビターを発症した場合の止血治療としては、バイパス製剤があります(参考:後天性血友病PT-INRAPTT)。
バイパス製剤である遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa:ノボセブン)または活性型プロトロンビン複合体製剤が止血に有効な場合が多いですが、時に無効な場合があります。

そのような場合は、両薬剤を併用すれば良いのでしょうか?



「インヒビター保有血友病に対するバイパス製剤の併用療法」

著者名:Ingerslev J, et al.
雑誌名:Br J Haematol 155: 256-262, 2011.


<論文の要旨>


血友病患者におけるインヒビターの発症は、最も重大な合併症です。

インヒビター保有の血友病患者の多くでは、バイパス製剤(活性型プロトロンビン複合体製剤、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤  rFVIIa:ノボセブン)が止血に有効ですが、一部の症例においては、いずれか一剤または両バイパス製剤ともに無効のことがあり、そのような場合には両バイパス製剤の併用(同時投与または一剤の後に他の一剤を連続投与)を行うことにより止血に成功することがあります。


しかし、バイパス製剤の併用は、血栓塞栓症を発症させる懸念があります。


著者らの調査の結果、バイパス製剤の併用療法に関するものが17文献あり、インヒビター保有の49症例(後天性血友病9例、先天性血友病でのインヒビター40例)のデータが集積されました。


その結果、バイパス製剤の併用療法では血栓塞栓症の合併が高頻度でした。

後天性血友病9例中5例、先天性血友病40例中5例において血栓塞栓症がみられ、全体で4例が死亡した。


以上、インヒビター症例に対してバイパス製剤の併用は有効ではあるものの、血栓症の合併症を明らかに増加させるものと考えられた。

【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:20| 出血性疾患