2011年01月02日
イピリムマブと後天性血友病A
後天性血友病の基礎疾患はいくつか知られていますが、今回のN Engl J Medの論文では、 イピリムマブにより第VIII因子インヒビターが出現した症例を報告しています(参考:後天性血友病、PT-INR、APTT)。
「イピリムマブによって誘導された後天性血友病A」
著者名:Delyon J, et al.
雑誌名:N Engl J Med 365: 1747-1748, 2011.
<論文の要旨>
イピリムマブは、細胞障害性Tリンパ球抗原4(CTLA 4)に対するモノクローナル抗体であり、転移性悪性黒色腫の予後を改善することが知られています。
転移性悪性黒色腫症例(42歳男性)が、化学療法などによる加療が行われましたが、病状が進行するために、イピリムマブ(3mg/kg、3週毎)による加療が行われました。
4回目の投与の数日前に、肉眼的血尿が観察されました(膀胱転移部位からの出血)。
血液検査より、第VIII因子インヒビター(26B.U.)の存在が確認されました。
ステロイドによる免疫抑制療法と遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa:ノボセブン)による止血治療が行われました。
固形癌は後天性血友病Aの原因となることがありますが、悪性黒色腫での報告は皆無です。
イピリムマブは、種々の免疫関連有害事象(大腸炎、下重体炎、甲状腺炎、肝炎、腎炎)を誘導することが知られていますが、後天性血友病の発症もありうるものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38| 出血性疾患