2012年02月03日
DICの治療:抗凝固療法/ヘパリン/アンチトロンビン
DICの治療(治療法別):基礎疾患の治療より続く
DICの治療(治療法別)(3)抗凝固療法(ヘパリン&アンチトロンビン)
2) 抗凝固療法
日本でDICに対して使用可能な抗凝固療法(参考:治療の種類)としてはいくつかの薬剤が知られていますが、DICの病態に応じて適切な薬剤を選択します。
a. ヘパリン類&アンチトロンビン濃縮製剤
現在の日本においてDICに対して使用可能なヘパリン類としては、ダナパロイドナトリウム(商品名:オルガラン)、低分子ヘパリン(商品名:フラグミンなど)、未分画ヘパリン(標準ヘパリン)があります。
これらのヘパリン類は、いずれもアンチトロンビン(AT)活性を促進させることによって、抗凝固活性を発揮する点で共通していますが、抗Xa/トロンビン(IIa)活性比や、血中半減期には相当な差違がみられます(参考:ヘパリン類)。
これらのヘパリン類の特徴を見極めながら、使い分ける必要があります。
ダナパロイドナトリウムは半減期が長いために、1日2回の静注(1,250単位を、1日2回12時間毎に静注)であっても効果が持続する点が魅力です。
この点、慢性DICに対しては最も良い適応となります(患者を24時間持続点滴で拘束する必要がありません)。
ただし、万一出血の副作用がみられた場合には半減期の長いことがデメリットになる場合があります。
また、腎代謝のため、腎機能障害のある症例や低体重の症例では減量して使用すべきです(他のヘパリン類にも当てはまる)。
ヘパリン類は、AT活性が低下した場合は充分な効果が期待できないため、AT濃縮製剤(商品名:アンスロビンP、ノイアート、ノンスロン)を併用します。
保険適応は、AT活性70%以下の症例でAT濃縮製剤を使用することが可能であり、1,500単位/日で3〜5日間使用されます。
ただし、この保険上の使用方法には医学的根拠はなく、より大量に使用できれば理想的です。
未分画ヘパリンは、ダナパロイドナトリウムや低分子ヘパリンと比較して医学的に優れている点はあまりありません。
未分画ヘパリン24時間持続点滴は、現在ほとんど使用されなくなってきています(未分画ヘパリンは安価である点のみがメリットです)。
しかし、へパリンカルシウムの在宅自己注射(皮下注)の保険適用認可というビッグニュースがあります。
今後、慢性DIC(腹部大動脈瘤など)に対して、へパリンカルシウムの在宅自己注射(皮下注)は普及していくようになるのではないかと思います。
(続く)DICの治療:合成プロテアーゼインヒビターへ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53| DIC