2012年02月10日
DICの治療:抗線溶療法
DICの治療:補充療法より続く
DICの治療(治療法別)(7)抗線溶療法
4) 抗線溶療法
DICにおける線溶活性化は、微小血栓を溶解しようとする生体の防御反応の側面もあり、トラネキサム酸(商品名:トランサミン)などの抗線溶療法は原則禁忌です。
特に、敗血症に合併したDICでは絶対禁忌です。
人道的に敗血症性DICの臨床例に対してトラネキサム酸を投与してはいけませんが、ラットのLPS誘発DICモデル(敗血症性DICのモデル)に対してトラネキサム酸を投与するとほとんど全てのラットが臓器不全を伴って死亡してしまいます(参考:ラットDICモデルに対する抗線溶療法)。
また、急性前骨髄球性白血病(APL)症例において、all-trans retinoic acid(ATRA)による分化誘導療法を行っている場合も、トラネキサム酸を投与すると全身性血栓症を併発して死亡したという報告が多数見られるため、絶対禁忌です。
APLに対してATRAを投与しますと、APLの本来の線溶亢進型DICの性格が変化して、線溶抑制型DICの病態に近付くものと考えられます。
ただし、線溶亢進型DICの著しい出血例に対して、ヘパリン類併用下にトラネキサム酸を投与しますと出血に対してしばしば著効することがありますが、使用方法を間違うと全身性血栓症をきたすために、必ず専門家にコンサルトの上で行う必要があります。
また、線溶亢進型以外のDICに対しては、トラネキサム酸は禁忌であるため線溶亢進型DICの診断は万全を期する必要があります。
(続く)DICの治療:免疫グロブリン製剤へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00| DIC