血友病A患者と冠動脈石灰化
血友病の患者さんでは、凝固因子が欠損していることで血栓性疾患になりにくいと考えられてきました。
しかし、動脈硬化になりやすいかどうかは、あまり検討されてきませんでした。
近年、血友病患者さんの止血コントロールが良好になってきましたので、動脈硬化のテーマが研究対象になるのではないかと思います。
「血友病A患者の冠動脈石灰化(第VIII因子活性低下は動脈硬化に対して阻止的に作用しない)」
著者名:Tuinenburg A, et al.
雑誌名:Arterioscler Thromb Vasc Biol 32: 799-804, 2012.
<論文の要旨>
血友病患者では、一般男性と比較して虚血性心疾患による死亡率が低いです。
著者らは、血友病患者における凝固因子活性の低下が、動脈硬化の進展を抑制しているかどうか検討しました。
冠動脈硬化の程度は、マルチスライスCTで評価しました。重症〜中等症の血友病A(男性42例、59才以上)と、非血友病男性613例とが比較されました。
HIV感染者や心血管疾患の既往のある症例は除外されました。
冠動脈の石灰化の程度は、Agatston scoreの算出と石灰量で定量化されました。
Agatston scoreを自然対数化した上での血友病と非血友病の平均差(β)は、0.141でした(P=0.709)。
年齢、BMI、高コレステロール血症、高血圧症、糖尿病薬の頻用で適合化しても、同様の結果でした(β=0.525、P=0.157)。
石灰化量の検討結果も同様でした。
以上、血友病患者における冠動脈石灰化の程度は、非血友病一般男性と差がみられませんでした。
そのため、血友病患者においても動脈硬化のスクリーニングや精査は重要と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:29| 出血性疾患