金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年03月05日

スコット症候群と出血性素因

論文紹介を続けあせていただきます。

Scott(スコット)症候群は、恥かしながら管理人の頭から忘れ去られていた疾患ですが、再インプットしたいと思います。

 

「原因不明の出血性素因としてのスコット症候群」

著者名:Flores-Nascimento MC, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis  23: 75-77, 2012.


<論文の要旨>

Scott(スコット)症候群は、血小板膜上のホスファチジールセリン発現が障害されていることによる、まれな出血性素因です。

血小板プロコアグラント活性やトロンビン形成能が低下するために凝血塊の形成が抑制されています。


著者らは、原因不明の出血エピソードを持った17才女性の症例を経験しました。

本症例の血液凝血学的検査は正常でしたが、細小動脈血流下の血小板凝集能は低下していたために血小板機能異常が示唆されました。


さらに、アネキシンVの発現量が著名に低下していたために、スコット症候群の確定診断がなされました。

本症例に対して血小板輸血を行ったところ、臨床症状が軽快しました。


以上、血液凝固学的検査が正常であるにもかかわらず異常出血の既往のある症例に遭遇したら、スコット症候群も念頭において精査すべきと考えられました。


(補足)

スコット症候群は、他の血小板機能異常症とは異なり出血時間は正常です。また、血小板第3因子測定結果が異常です。

 

<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38| 出血性疾患