金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年03月07日

rFVIIa誘導体によるインヒビター保有血友病患者の治療

論文紹介を続けさせていただきます。

後天性血友病(参考;血友病)は、まれな疾患と従来は言われてきましたが、最近遭遇する機会が多くなってきたように思います。

この症例が増えたというよりも、見逃されることが少なくなってきたためではないかと思っています。

 

「rFVIIa誘導体によるインヒビター保有血友病患者の関節内出血に対する治療」

著者名:Paula E, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost   10: 81-89, 2012.


<論文の要旨>

遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)誘導体(NN1731 ; vatreptacog alfa)は、インヒビター保有血友病患者に対する安全で、即効性があり、効果持続の長い止血剤となる期待のもとに開発されました(参考:後天性血友病血友病)。

インヒビター保有血友病患者における急性関節内出血に対して、NN1731群(5,10,20,40,80μg/kgを1〜3回)とrFVIIa群(90μg/kgを1〜3回)とを比較検討しました。


一時エンドポイントは、包括的な有害事象とし、二次エンドポイントは、免疫反応、薬理動態、効果としました。


対象は、51症例(12才以上)の96関節内出血でした。

その結果、NN1731は有効であり有害事象が低頻度でした。

また、NN1731に伴う免疫反応や血栓症の発症もみられませんでした。


出血の98%はNN1731 20〜80μg/kgの初回投与により9時間以内にコントロールされました。

一方、rFVIIaの有効率は90%でした(既報と同レベルでした)。


今回の検討は有効性の比較を主眼としたものではないですから、NN1731とrFVIIaの有効性を比較するための臨床も必要と考えられます。

 

<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:13| 出血性疾患