金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年03月06日

高齢者の後天性血友病A

論文紹介を続けさせていただきます。

後天性血友病(参考;血友病)は、まれな疾患と従来は言われてきましたが、最近遭遇する機会が多くなってきたように思います。

この症例が増えたというよりも、見逃されることが少なくなってきたためではないかと思っています。

 

「高齢者後天性血友病A3例の臨床的検討」

著者名:斉藤 誠、他。
雑誌名:臨床血液    53: 240-245, 2012.


<論文の要旨>

後天性血友病Aの3例を経験し、その臨床病態を検討して報告しています。

3例とも高齢(79歳、77歳、68歳)の男性で、皮下出血とAPTTの延長、貧血を認めたため、紹介入院となり、第VIII因子活性の低下(0.9〜3.1%)、第III因子インヒビタの存在(57.1〜173BU/ml)により後天性血友病Aと診断しました。

症例1と症例2は活性型第VII因子製剤(商品名:ノボセブン)の投与により止血を行い、症例1はプレドニゾロン(PSL)単剤で、症例2はPSLに途中、シクロホスファミドを併用し、それぞれ第VIII因子インヒビターは消失しました。

症例3は週1回、5サイクルのリツキシマブ(RTX)投与により、第VIII因子インヒビターは3.5U/mlまで低下(後日、消失を確認)、この間、特に止血剤を用いることなく止血に成功し、肝細胞癌を治療するため前医に再転院となりました。


後天性血友病Aは第VIII因子に対するインヒビターが原因とされ、その制御のため第一にPSLが選択されることが多いですが、症例によってはRTXも試されて良い治療薬と考えられました。

 

<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:49| 出血性疾患