2012年03月11日
遺伝子組換え変異型第IX因子と血友病治療
今回紹介させていただく論文も大変に興味あります。
このような遺伝子組換え変異型第IX因子が実際に臨床の場で使われるようになると素晴らしいですね。
「遺伝子組換え変異型第IX因子は第VIII因子をバイパスして血友病Aの出血症状を軽減する(マウス)」
著者名:Milanov P, et al.
雑誌名:Blood 119: 602-611, 2012.
<論文の要旨>
第IX因子と、その補因子である第VIII因子が複合体を形成することは、内因系凝固機序が進行する上で必須です。第VIII因子、第IX因子のいずれかが欠損すると血友病となります。
第VIII因子は最も疾患と関連しやすい凝固因子で、X染色体上の遺伝子変異をきたせば(先天性)血友病Aを発症し、第VIII因子に対する自己抗体が出現すれば後天性血友病Aを発症します。
血友病Aの治療は第VIII因子濃縮製剤が主体ですが、インヒビターが出現した場合の対処法は困難なことがあります。
著者らは、第VIII因子非存在下で内因系凝固反応を進行させる変異型第IX因子を開発しました。
これをFVIII-KOマウスに発現させたところ、凝固時間は短縮し、尾切断後出血量は減少し、レーザーによる血管損傷部位における凝血塊形成を復活させました。
加えて、第VIII因子対する抗体を有したマウスに対しても変異型第IX因子の効果を確認しました。
遺伝子組換え変異型第IX因子は、インヒビターの有無にかかわらず血友病Aに対して有効である可能性が示唆されました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39| 出血性疾患