金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年04月08日

敗血症と凝固第XI因子抑制:炎症と凝固

第XI因子は、生理的止血における関与は大きくないと考えられています。

そのため、第XI因子をブロックするような治療は、出血の副作用をアップさせることなく抗凝固作用を発揮するのではないかという期待があります。

今回紹介させていただく論文は、究極の血栓症とも言える播種性血管内凝固症候群(DIC)関連ですが、DIC以外の広く一般的な血栓症(参考:深部静脈血栓症/肺塞栓)に対しても有望ではないかと期待させてくれる報告です。

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「敗血症モデルにおいて凝固第XI因子を抑制することで炎症および凝固異常を軽減する」

著者名:Tucker EI. et al. 



雑誌名:Blood. 2012 Mar 22. [Epub ahead of print]


<論文の要旨>

重症細菌感染症では、しばしば全身的な血栓傾向および炎症反応の状態になり、播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症性ショック、多臓器不全をきたします。

接触相に関与する凝固因子である第XII因子、プレカリクレイン、第XI因子の活性化は、凝固活性化および炎症反応を促しますので、接触相に対して介入するような治療は敗血症に対して有効ではないかという考え方がありました。
しかし、重症感染症における接触相活性化の意義は、あまり明らかにされていませんでした。

著者らは、活性化第XII因子(FXIIa)による第XI因子活性化を選択的に抑制する抗体(14E11)を用いて、マウス腸管穿孔腹膜炎モデルに対する影響を検討しました。

その結果、マウスモデルに対して早期に14E11を用いた抗凝固療法を行いますと、TAT、IL-6、TNFαの上昇、血小板数低下、血栓沈着を抑制しました。

腸管穿孔後12時間以内に14E11を投与しますと有意に生存率を改善しました。また、用量を充分に増加させても、尾切断出血量を増やすことはありませんでした。


以上、重症腹部感染症(多細菌性)では第XI因子の活性化を誘導し、生体に不利益をもたらすことが確認されました。

そして、敗血症において第XI因子活性化を抑制したり、第XIIa因子の向凝固活性を抑制して抗凝固療法を行うことで、出血のリスクを増やすことなく播種性血管内凝固症候群(DIC)の発症を抑制できるものと考えられました。

<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43| DIC