金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年04月09日

DIC(感染症、敗血症)とトロンボモジュリン(リコモジュリン)

遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(商品名:リコモジュリン)は、DICに対する特効薬として期待されています。

日本で行われた第三相臨床試験の結果は、欧文学会雑誌に報告されています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17059423

今回紹介させていただく論文は、この臨床試験のサブ解析です。

 

「DIC合併感染症患者に対するトロンボモジュリン治療:第3相試験のサブ解析」

著者名:Aikawa, N. et al. 




雑誌名:Shock 35: 349-354, 2011.


<論文の要旨>

感染症を基礎疾患とした播種性血管内凝固症候群(DIC)に対する遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rTM)の治療効果を検討するために、二重盲見無作為比較試験(第3相臨床試験)の後方視的サブ解析を行いました。

この第3相臨床試験では、227症例(基礎疾患は感染症および造血器悪性腫瘍)が登録されており、rTM(0.06mg/kgを30分間で点滴静注、1日1回)またはヘパリン(8単位/kg/時を24時間)が6日間投与されました(ダブルダミー法)。


これらの症例のうち、感染症以外に起因する高度の血小板減少患者(造血期悪性腫瘍、再生不良性貧血)147例は、今回の解析から除外されました。

そのため、DICを合併した感染症患者80例が抽出され、後方視的サブ解析を行いました。


急性期DIC診断規準を用いて、7日目におけるDIC離脱率を評価しました。

また、28日目における死亡率を評価しました。


rTM治療群およびヘパリン治療群におけるDIC離脱率は、それぞれ67.5% (27/40)および 55.6%(20/36)でした。

また、28日目における死亡率は、それぞれ21.4%(9/42)および 31.6%(12/38)でした。


DICから離脱した患者での死亡率は、rTM治療群では3.7%(1/27)、ヘパリン治療群では15%(3/20)でした。


以上、rTMは感染症を基礎疾患としたDIC症例に対して有用と考えられました。

 

<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:40| DIC