2012年05月25日
新規経口抗凝固薬(9): リバーロキサバンとプロトロンビン時間
新規経口抗凝固薬(8): エドキサバン(リクシアナ)とPT-INRより続く。
参考記事:PT-INR、ダビガトラン、プラザキサ、ワーファリン、リバーロキサバン、アピキサバン、深部静脈血栓症
整形外科術後の深部静脈血栓症(DVT)/肺塞栓(PE)発症予防目的ちした治療薬としては、フォンダパリヌクス(アリクストラ)、エノキサパリン(クレキサン)と言ったヘパリン類(注射薬)が用いられてきました。
これらに加えて日本では、新規経口抗凝固薬の一つであるエドキサバン(リクシアナ)も、整形外科術後のDVT/PE発症予防目的に使用することが可能になりました。
今後、これらの薬物をどのように使い分けするのが良いのかが議論されるようになるものと思っています。
さて、上図は整形外科術後のDVT/PE発症予防目的にリバーロキサバンを用いて(日本ではまだ保険適応はありません)、プロトロンビン時間:PT(PT-INR)への影響をみたものです。
やはり、どのPT試薬を用いて測定するのかによって、データを見た際の印象が相当に違うように思われます。
加えて、この図を見て感じることは、症例によってプロトロンビン時間(PT)延長度の個人差がとても大きいことです(分布を示すバーの幅が広いことが注目されます)。
たとえば、Recombiplastin内服2時間後ですが、PTは、12〜23秒と大きく分布しています。PT23秒の症例は出血しないのでしょうか。
これほどに個人差が大きいということは、この薬剤はモニタリングする必要があるという意味ではないかと管理人らは考えています。
PT延長度の個人差が大きい理由ですが、血中濃度がピークになるタイミングに個人差(0.5〜4時間)があるせいかも知れません。
1)PT試薬に何を用いるかによって同じ検体であっても成績が違う。
2)採血のタイミングによってPT値が異なる。
上記の2点はこの論文の主旨を構成する重要ポイントですが、私たちの臨床の場においても常に意識しないといけない点ではないかと思います。
リバーロキサバン投与患者で、例えばPT13秒という成績が出た場合、服薬と採血のタイミングを把握せずに値だけで判断すると、出血リスクを見逃す可能性があるとも言えます。
投与後2時間後のPTが13秒でも、血中濃度がピークになるタイミングの個人差のために、3時間後、4時間後には想定以上に延長している(ピークが来る)可能性もあると考えられます。
新規経口抗凝固薬におけるPTやAPTT測定の主たる意義は、出血のリスク(効果でなく)をチェックすることにあると考えられます。
上記のように採血ポイントや血中濃度ピークの個人差のために単純ではありませんが、定期的に測定するピーク時間近辺でのPTやAPTTが想定値以上の延長になった場合はリスクがあると考えることで、全例ではないにしても相当数の患者さんのリスクを回避できるのではないかと思っています。
(続く)新規経口抗凝固薬(10): ダビガトラン(プラザキサ)とAT活性 へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53| 抗凝固療法