後天性血友病の疫学
今回紹介させていただくJ Thromb Haemost 誌の論文では、後天性血友病に関する欧州多施設症例における疫学的検討結果です。
症例数が多いので説得力があるように感じます。
「後天性血友病の疫学&臨床データ」
著者名:Knoebl P, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 622-631, 2012.
<論文の要旨>
後天性血友病A(AHA)は、第VIII因子に対する自己抗体が出現し、異常出血の家族歴や既往歴のない者が自然出血をきたす稀な自己免疫性疾患です。
現在、AHAに対する至適治療法の情報は限られています。
AHAの疫学、診断、基礎疾患、出血の特徴、治療法、予後に関するデータベースを作るために、European Acquired Hemophilia Registry (EACH2)が設置されました。
欧州13ヶ国の117センターから501症例(男性266例、女性235例)が対象となりました(2003年〜2008年)。
467症例においては、出血のイベントを契機に止血検査とAHAの診断がなされました。
診断時の年齢中央値は73.9歳でした。
AHAのうち、特発性が51.9%、悪性疾患によるもの11.8%、自己免疫性疾患11.6%でした。
妊娠関連症例を除くと、AHAの57%が男性でした。
474件の出血イベントは初診時にみられ、70.5%では止血治療が開始されました。
33.5%の症例では、診断の遅れが治療開始に影響を与えていました。
477症例において免疫抑制療法が行われ、72.6%では完全寛解となりました。
EACH2は、AHAの様々な疑問点を解析していく上で寄与するものと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15| 出血性疾患