金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年07月05日

アミオダロンと第V因子インヒビター

今回紹介させていただくBlood Coagul Fibrinolysis 誌の論文では、第V因子インヒビターの原因として、抗不整脈薬であるアミオダロンも挙げられるのではないかと述べています。


凝固因子インヒビターは稀な疾患です。その中でも、第VIII因子インヒビターが最も多いですが、次が第V因子インヒビターではないかと思います。

第V因子インヒビターは、術中あるいは観血的処置時(内視鏡検査を含む)に使用される牛トロンビン製剤との関連も原因のひとつとして指摘されています。

参考:血友病後天性血友病


「アミオダロン療法に伴う第V因子インヒビター」

著者名:Shreenivas AV, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 342-344, 2012.


<論文の要旨>

第V因子インヒビターは、まれな出血性素因です。

著者らは出血症状をきたした高齢者男性で、後日に第V因子インヒビターを発症していることが確認された症例を報告しています。

本症例は心房細動に対してアミオダロンが投与されましたが、アミオダロン内服開始数ヶ月後に第V因子インヒビターに起因する出血症状をきたしました。


文献的には、第V因子インヒビターの多くは牛トロンビンに暴露された後に出現しています。

しかし、著者らの症例は、手術中に牛トロンビンは使用されていませんでした。

しかも、牛トロンビンが原因となる第V因子インヒビターは暴露後1〜2週間で出現しますが、著者らの症例は数ヶ月後に出現しています。


アミオダロンを中止して、ステロイドおよびサイクロフォスファマイドの投与を行ったところ、6週間後には凝固異常は劇的に改善しました。


以上、第V因子インヒビター発症の原因として、アミオダロンも加えるべきと考えられました。


<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30| 出血性疾患