金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年07月06日

血友病インヒビターとBAY86-6150(rFVIIa)

今回紹介させていただくJ Thromb Haemost 誌の論文では、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa:ノボセブン)の改良型であるBAY86-6150の第I相試験の結果を紹介しています。

ノボセブンは素晴らしい止血剤ですが、半減期が短いために頻回の投与が必要なことが問題点とされてきました。半減期の長い活性型第VII因子製剤の開発は、一つの方向性になっています。

 

参考:血友病後天性血友病


「改良型遺伝子組換え活性型第VII因子製剤の血友病患者への投与(第I相試験)」

著者名:Mahlangu JN, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 773-780, 2012.


<論文の要旨>

BAY86-6150(BAY)は、新しいタイプの遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)であり、インヒビター含有血友病患者に対して優れた向凝固活性と長い半減期を有することが期待されています。

対象は、出血のしていない血友病A&B(中等症〜重症:18〜65歳)(インヒビター有無ともに含まれます)です。

16症例が、BAY(6.5, 20, 50, 90μg/kg)投与群またはプラセボ投与群へ無作為に分類されました。コホートデータをみてBAYの増量が行われました。


その結果、今回行われたBAY用量では、臨床的意義を有した有害事象や用量制限毒性はみられませんでした。

BAYの薬理動態の検討では、用量により直線的に反応し、半減期は5〜7時間でした。


乏血小板血漿(PPP)を用いたトロンビン形成試験においては、用量依存性のトロンビン形成がみられました。

また、PTおよびAPTTは短縮しました。

50日間の追跡でもBAYに対する中和抗体は出現しませんでした。


以上、BAYは90μg/kgの用量まで安全であり、今後第II&III相臨床試験によりBAYの有効性と安全性を評価すべきと考えられました。


<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51| 出血性疾患