金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2012年07月08日

血友病A:予防治療 vs. 出血時輸注療法

今回紹介させていただくJ Thromb Haemost誌の論文では、血友病Aに対して出血時輸注療法よりも予防治療の方が良く、さらに予防投与法であっても投与方法の工夫ができることを報告しています。


参考:血友病後天性血友病


「血友病A患者における2種類の予防治療の比較と出血時輸注療法との比較」

著者名:Valentino LA, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 359-367, 2012.


<論文の要旨>

インヒビターを保有しない血友病Aに対する至適治療は第VIII因子製剤による予防治療と考えられています。

著者らは、アドベイト(遺伝子組換えの血漿/アルブミン非含有製剤)よる2種類の予防治療の比較(主要評価項目)、および出血時補充療法と予防治療の比較(二次評価項目)を行いました。


これまで出血時輸注療法が行われてまた66症例(7〜59歳;FVIII活性≦2%)が、まず6ヶ月間の出血時輸注療法が継続され、その後に(1)20〜40IU/kgを隔日投与12ヶ月間、or(2)20〜80IU/kgを1回/3days(薬物動態で調節)12ヶ月間に分類されました。

いずれの投与法においてもFVIII活性のトラフ値を1%以上を目標とした。効果は年間出血率(ABR)で評価されました。


予防治療が行われたうち22症例(33.3%)では出血のエピソードが全くみられませんでしたが、出血時輸注療法が行われた症例では出血の無い症例は存在しませんでした。


ABRは、2つの予防治療法間で差がありませんでしたが、いずれの予防治療法であっても出血時輸注療法との間には大きな差がみられました。

ABR中央値は、出血時輸注療法43.9、(1)の予防治療法1.0、(2)の予防治療法2.0、両予防治療法1.1でした。

FVIII使用量や有害事象出現率は、2種類の予防治療法間で差はみられませんでした。第VIII因子インヒビター発症者はいませんでした。


以上、2種類の予治療法の有用性には差がなく、いずれの方法であっても出血時輸注療法よりも出血を減らすものと考えられました(1)の標準的な予防治療のみでなく、(2)の予防治療法も代替治療になるものと考えられました。


<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:46| 出血性疾患