金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年07月07日

血友病Aと遺伝子組換え第VIII因子・Fc融合蛋白

今回紹介させていただくBlood誌の論文では、新しい方向性での第VIII因子製剤を報告しています。

現在使用されている第VIII因子製剤の半減期は半日程度です。この半減期が長くなれば、投与回数を減らすことが期待できます。

現時点では夢のような話ですが、半減期が一ヶ月以上の製剤があったら、とても素晴らしいのではないでしょうか。

参考:血友病後天性血友病


「血友病A患者に対する遺伝子組換え第VIII因子・Fc融合蛋白の安全性と活性の持続」

著者名:Powell JS, et al.
雑誌名:Blood 119: 3031-3037, 2012.


<論文の要旨>

現在使用されている第VIII因子(FVIII)製剤の半減期は8〜12時間であるため、血友病A患者の予防治療や出血時投与に際して頻回の輸注が必要となります。

rFVIIIFcは、FVIIIが1分子とヒトIgG1のFc領域が結合した融合蛋白であり、半減期が長くなっています。

著者らは血友病A16症例に対して、rFVIII(25 or 65IU/kg)を1回投与した後に、同量のrFVIIIFcを投与した。


その結果、有害事象のほとんどは薬物と無関係でした。

また、抗rFVIIIFc抗体やインヒビターが出現した症例もありませんでした。

rFVIIIFcはrFVIIIと比較して、半減期は1.54〜1.70倍、クリアランスは1.49〜1.56倍長く、AUCは1.48〜1.56倍となりました。


以上、rFVIIIFcは、血友病A患者における止血能の是正時間を延長し、製剤の輸注回数を減らす上で有用ではないかと考えられました。


<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24| 出血性疾患