PNHと血栓症(2):血栓症の頻度
<PNHにおける血栓症(1)>
PNH症例における血栓症は重大な合併症で死因となりえます。
de Latour RP, Mary JY, Salanoubat C, et al. Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: natural history of disease subcategories. Blood. 2008; 112: 3099-106.
静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症/肺塞栓)が最も多いです。
腹腔内(Budd-Chiari症候群、腸間膜静脈血栓症)、脳静脈洞血栓症など、まれな部位の血栓症がみられる場合もあります。
しかも、抗凝固療法による血栓症の一次予防を行っている場合でも、血栓症を発症することがあります。
Hillmen P, Muus P, Dührsen U, et al. Effect of the complement inhibitor eculizumab on thromboembolism in patients with paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. Blood. 2007; 110: 4123-8.
ただし、欧米と日本では血栓症の発症頻度に大きな差異がみられ、日本では欧米と比較して明らかに低頻度です(上表)。
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業. 特発性造血障害に関する調査研究班(主任研究者 小峰光博)/PNH の診断基準と診療の参照ガイド作成のためのワーキンググループ. 発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド. 2005.
米国例では初発症状の19%が血栓症であるのに対して、本邦例では6%に過ぎません。
発症後の合併症ならびに死因を含めた全経過でみても、米国例の38%に対して、本邦例は10%と有意に低頻度でした
これらの血栓症発症頻度に関するデータは、PNH診断の精度や(クローンが大きく拡大した症例のみ診断される低感度では高頻度に算出されます)、無症候性血栓症の診断までも行っているかどうかで数字が変動する可能性があることを念頭におく必要があります。
Hillmen P, Lewis SM, Bessler M, et al. Natural history of paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. N Engl J Med. 1995; 333: 1253-8.
Socié G, Mary JY, de Gramont A, et al. Paroxysmal nocturnal haemoglobinuria: long-term follow-up and prognostic factors. French Society of Haematology. Lancet. 1996; 348(9027): 573-7.
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24| 血栓性疾患