金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年09月20日

PNHと血栓症(6):遊離型ヘモグロビンとNO

PNHと血栓症(5):TFPIと凝固より続く。


<PNH血栓症の発症機序(3)>

遊離型ヘモグロビンとNO欠乏の意義

血管内溶血を生じますと、遊離型ヘモグロビンの量が増加します。

通常、遊離型ヘモグロビンが生じてもハプトグロビンとの結合などにより、速やかに循環血中から消失します。

しかし、この処理能力を上回った過剰な遊離型ヘモグロビンは、血管内皮に直接影響を及ぼし、内皮の炎症、増殖、酸化状態をきたすことになります。


また、遊離型ヘモグロビンは不可逆的に一酸化窒素(NO)と結合して、硝酸塩とメトヘモグロビンが形成されます。


溶血した赤血球からはアルギナーゼが遊離され、アルギニン(NOの基質)をオルニチンへ転換します。

これらの機序により、体内のNO活性は低下します。


NOには、平滑筋弛緩作用、血小板活性化や凝集に対する抑制作用、血管内皮に対する抗炎症作用があることが知られています。

そのために、PNH患者において溶血によってNO活性が低下しますと血栓傾向となります。


ただし、NO活性低下と静脈血栓症の関連はなお議論の余地があります。

静脈には平滑筋はなく、また静脈血栓症では血小板の関与が少ないと考えられるためです。
 

(続く)

PNHと血栓症(7):血小板活性化

 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
 

 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08| 血栓性疾患