金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年09月24日

PNHと血栓症(10):動脈血栓症と静脈血栓症

PNHと血栓症(9):線溶(u-PAR)より続く。


<PNH血栓症の発症機序(7)>

血栓症の部位からみた病態

PNH症例の血栓症の特徴として静脈血栓症が多いことを挙げることができます。

特に腹部(Budd-Chiari症候群を含む)や脳静脈洞などの一般的でなく稀な部位での血栓症もみられます。

静脈血栓症は血小板活性化ではなく凝固活性化を主病態としていますので、既述の中で血小板活性化の機序はPNHにおける血栓症の主役とは考えにくいと思われます。


この観点からは、PNH血栓症の機序として血管内皮の役割に注目したいところです。

例えば、TFPIは微小血管に高発現しており、特に肺、肝、脳に多く存在します。

もしもGPI欠損血管内皮がこれらの臓器に存在していれば、血栓症発症の大きな機序になる可能性があります。

Van Bijnen ST, Van Heerde WL, Muus P, et al. Mechanisms and clinical implications of thrombosis in paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. J Thromb Haemost. 2012; 10: 1-10.


腸間膜静脈や門脈では細菌や食物抗原の暴露を受けやすく、局所で補体を活性化して、より溶血をきたしやすい部位である可能性があります。

その結果、血管内皮障害やMP遊離が生じやすい部位である可能性があります。


一方、NOが欠損していることによって平滑筋細胞や血小板機能への影響が出て動脈血栓症の原因にはなるかも知れませんが、静脈血栓症の主因とは考えにくいです。

 

(続く)PNHと血栓症(11):ワルファリンによる血栓症予防

 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:49| 血栓性疾患