金沢大学第三内科同門会近況報告:金沢医科大学生化学
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会の先生の近況報告を、ブログ記事としてアップさせていただきます。
今回は、金沢医科大学生化学教授の岩淵先生です。
実は、管理人の同期生です。大変な御活躍で、とても嬉しく思っています。
金沢医科大学での18年間
昭和59年入局 岩淵邦芳
1995年、留学からの帰国が決まった際に、松田保教授のご高配により金沢医科大学血液免疫内科の講師のポジションをいただきました。
このポジションなら留学先で行っていた研究も継続できるだろうと思い、その後2年あまり血液免疫内科で過ごしました。
しかし残念ながら当時の血液免疫内科は、実験に必要な器具もそろっておらず、加えて若い研修医が入らず慢性的な人手不足で、殆ど実験をする時間が確保できない状態でした。
そこで、生化学I研究室で設備や器具を借りて、実験をさせてもらうことにしました。
これがご縁で、生化学Iの伊達孝保教授から生化学Iに移らないかとお誘いを受け、1997年生化学Iへ籍を移しました。
大学を卒業して13年間臨床医として働いてきた者が、基礎医学研究者としてこの後どれくらいの仕事ができるか不安はありましたが、当時は、あと何年間かは実験をしてみたいという思いのほうが強く、あまり迷いませんでした。
行き詰ったら3内に泣きつこうという甘い考えもあったように思います。
以来12年間、思う存分やりたい実験だけをすることができました。
私は留学先で、53BP1という、癌抑制蛋白質p53と結合する新しい蛋白質を見つけました。
帰国当時その機能は全く不明でしたので、さっそく53BP1の機能解析に着手しました。
当初は科研費もなかなか採択されず苦しみましたが、実験成果を毎年学会で発表していくにつれ、少しずつ53BP1に興味をもってくれる研究者が増えてきて、次第に科研費も取れるようになってきました。
53BP1は大きな蛋白質であるため、そのcDNAを容易にRT-PCRでクローニングすることはできません。
そのため、世界中の研究者から53BP1cDNAの供与依頼が届くようになり、これも53BP1について知ってもらう大きな要因となりました。ただし、cDNAの供与は諸刃の剣で、こちらがわずかなデータを基に論文を書いている時に、cDNAを供与した研究室からさらに内容豊富な論文を発表されてしまうということが何度もありました。
2009年、12年間楽しんだわりにこれといった論文が出ないまま、前教授の定年退職に向けての次期教授選考が始まりました。
なにぶんにも私立医科大学の基礎研究室の教授選考のことですから、全国公募でも7名程度の応募しかなかったこと、また、何をしたというわけでもないのですが金沢医科大学に15年間在籍していたということが幸いして、何とか生化学Iの第3代教授に選任されました。
現在教授になって3年半になります。
いまだに53BP1にしがみついてその機能解析を行っています。
教授になって変わったのは、大学の雑用が増えたため自分では全く実験ができなくなったこと、そのかわりに教室員全員を53BP1の研究に使えるようになったことです。
薬学部の博士課程を終えたばかりの若い研究者も加わってくれて、面白そうなデータを少しずつ出してくれています。
何とか、母校金沢大学に負けないよう、頑張っていきたいと思っています。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51| その他