金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年01月20日

トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは

トロンボテスト(TT)& ヘパプラスチンテスト(HPT)


【基準値】

TT:>70%、HPT:70〜130%

関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?PT(PT-INR)正常値プラザキサ vs ワーファリン プロトロンビン時間とは


【測定法】

いずれもPT検査の亜系であり、組織因子による凝固時間を測定しています。

ただし、試薬に弱力価の組織因子、第V因子、フイブリノゲン(I)が含まれているため、外因系凝固活性化機序のうちVとIの影響が除かれます。

すなわち、第VII、X、II因子の減少で、測定値(%)は低下します(秒は延長しており、秒を%に換算しています)。


【検査の意義】

TTは低値での精度が良く、PIVKA(ビタミンK(VK)欠乏状態で誘導される蛋白)凝固因子の影響を受けやすいです。もっぱらワルファリン(Wa)コントロール目的に使用されます。

HPTは、正常〜正常下限レベルでの定量性が高く、PIVKAの影響を受けにくいです。肝予備能のマーカーとして用いられます。ただし、PTでも同目的を果たせるため、検査件数が低下しています。

【異常値となる疾患・病態】
ワルファリン内服中、VK欠乏症、第VII・X・II因子活性の低下、肝不全、(ループスアンチコアグラントの一部)など。


【異常値となる機序】
1)    ワルファリン内服中、VK欠乏症:VK依存性凝固因子である第VII・X・II因子活性が低下するため。ワルファリン内服中は、通常TT10〜10数%でコントロールします。なお、INR 2.0 はTT 17%、INR 3.0はTT 9%に相当します。

2)    肝不全:第VIII因子を除く全凝固因子が低下するため(VK依存性凝固因子も低下)、異常値となります。

【注意点】
1)    Wa関連でEBM根拠となる大規模臨床試験の多くがPT-INRで評価されているため、TTは検査件数が低下しています。しかし、純粋にVK依存性凝固3因子(VII、X、II)のみを評価する点で、本来はTTの方が優れています。たとえば炎症反応でフィブリノゲン(I)が上昇している場合、PT-INRでは実際のコントロールよりも弱いと誤判断される可能性があります

2)    Wa内服中のHPT測定は通常行ないませんが、誤って測定して異常低値を見ても当然ながら肝予備能低下を意味しません。

3)    Wa関連のピットフォール:PIVKA IIはVK欠乏状態で血中に出現しますが、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしても知られています。Wa内服中は当然PIVKA IIは著増しますが、肝細胞癌ではありません(PIVKA IIの測定自体がナンセンスです)。

【検査プラン】
1)    PT、APTTが正常であるにもかかわらず、TTやHPTが低下する場合があります。TTやHPT試薬中のリン脂質がPT試薬よりも低濃度であることに起因するループスアンチコアグラントの存在を意味することがあります(参考:抗リン脂質抗体症候群)。

2)    TTやHPTが正常であるにもかかわらずPTが延長している場合には、フィブリノゲンも正常であれば、第V因子欠損症(またはインヒビター)の可能性が高いです。


<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32| 凝固検査