医師国家試験の問題紹介と解説(1)
本年の医師国家試験の問題紹介と解説です。
欠乏すると血栓傾向が生じるのはどれか.3つ選べ.
a アンチトロンビン
b フィブリノゲン
c プロテインC
d プロテインS
e プロトロンビン
(解説)
凝固因子、凝固阻止因子をそれぞれ知っていれば容易に解答できる基本的な設問です。落としたくない一問と言えるでしょう(参考:先天性血栓性素因と病態:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症)。
a かつては、アンチトロンビンIII(ATIII)と呼称されましたが、現在は単にアンチトロンビン(AT)と呼称することが多いです。トロンビンや活性型第X因子などの活性型凝固因子を阻止します。欠乏すると血栓傾向になります。
b 死語に近いですが血液凝固第I因子とも言います。欠乏すると出血傾向になります。
c プロテインC (PC)は、AT同様に、凝固阻止因子です。活性型PC(APC)は、活性型第V因子(FVa)と活性型第VIII因子(FVIIIa)を不活化します。欠乏すると血栓傾向になります。
d プロテインS (PS)は、APCの補酵素です。欠乏すると血栓傾向になります。
e 血液凝固第II因子とも言います。欠乏すると出血傾向になります。
(正解)
a、c、d
(備考)
生理的な凝固阻止因子としては、アンチトロンビン(AT)、プロテインC (PC)、プロテインS (PS)、組織因子経路インヒビター(TFPI)などが知られています(参考:先天性血栓性素因と病態:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症)。
先天性AT欠損症、先天性PC欠損症、先天性PS欠損症では、若年時より血栓傾向(特に静脈血栓症)をきたしやすいです。
いずれの先天性欠損症ともにホモ接合体はまず生存できず、通常は50%に低下したヘテロ接合体です。
これらの3つの凝固阻止因子の中で、PCとPSはビタミンK依存性(昨年の国家試験既出)のために、ワルファリン(ビタミン拮抗薬)内服に伴い活性が低下することも知っておきたいです。
ビタミンK依存性蛋白が連続して出題されています。
ビタミンK依存性蛋白はいくつも知られているが、医学生としては、以下は知っておきたいです。
・ ビタミンK依存性凝固因子:VII、IX、X、II(半減期の短い順、VIIが最も半減期が短い)
・ ビタミンK依存性凝固阻止因子:PC、PS
・ 骨代謝関連蛋白:オステオカルシン
<リンク>
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11| 医師国家試験・専門医試験対策