金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年03月22日

皮下血腫と後天性血友病

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

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重度皮下血腫を契機に診断された後天性血友病の2症例

著者名:田中亮子、他。
雑誌名:日本検査血液学会雑誌 13: 322-331, 2012.


<論文の要旨>

後天性血友病Aは従来出血傾向が認められなかったにもかかわらず、何らかの原因により血液凝固第VIII因子(FVIII)に対する自己抗体(インヒビター)が生じ、突如として重篤な出血症状をきたす疾患です。

今回、著者らは、治療が奏功した2例の後天性血友病Aを経験し報告しています。


症例1は39歳女性、第3子出産から約10ヵ月後、左上肢皮下血腫、右大腿部筋肉内出血を認めました。FVIIIインヒビター抗体価は17.6BU/mlで、妊娠を契機として生じた後天性血友病Aと診断しました。

副腎皮質ステロイドによる免疫抑制療法を施行し、約1ヶ月以内にFVIII活性軽快傾向を認めたましたが、インヒビターの消失には2年を要しました。


症例2は79歳男性、中咽頭癌、舌癌に対して放射線療法を行い、下顎骨の放射線性骨髄炎により近医通院中でした。

左上肢全体に急激に皮下血腫を発症、FVIIIインヒビター抗体価68BU/mlと高値で、後天性血友病Aと診断しました。

止血管理には難渋しましたが、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rVIIa)によりコントロール可能でした。

副腎皮質ステロイドに加え、cyclophospamideのパルス療法を行い、12週間後にはインヒビター消失しFVIII活性も上昇、寛解しました。


突然の出血を認めた場合には、後天性血友病Aを鑑別診断として念頭に置く必要があります。

本疾患の診断遅延は予後不良につながるため、FVIII活性、Bethesda(B法)だけでなくクロスミキシング試験(直後および2時間後の判定)を迅速に行い、診断•治療に反映させることが重要となります。




<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30| 出血性疾患