第XIII因子インヒビターと出血
論文紹介です。
参考:血友病、後天性血友病、rFVIIa、血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
「第XIII因子インヒビターに伴う致命的な出血傾向」
著者名:Sugiyama H, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 24: 85-89, 2013.
<論文の要旨>
先天性第XIII因子欠損症は、まれな出血性素因です(参考:遺伝子組換え第XIII因子製剤:第XIII因子欠損症に対して)。
一方、第XIII因子の産生低下や消費亢進に伴う後天性第XIII因子欠損症は少なくないです(出血症状をきたすことはほとんどありません)。
ただし、第XIII因子に対する自己抗体が出現することによる自己免疫性/後天性出血性素因(autoimmune/acquired hemorrhaphilia XIII due to anti-FXIII antibodies : AH13)はまれな疾患ですが、致命的な出血症状をきたします。
著者らはAH13の全国調査を通して、66才女性の重症AH13を診断しました。
患者は手に皮下血腫をきたしたために受診となりました。
1.5ヵ月後には、筋肉内血腫もきたしましたが、第XIII因子活性は約半分(52%)を維持していました。
出血傾向は重症化して、大きな腹部の筋肉内血腫、骨盤内出血、腹膜内出血もきたすようになりました。
患者が出血をきたすようになって2ヶ月後、血漿交換治療を行ったにもかかわらず死亡しました(血漿交換は第XIII因子に対する抗体を強く疑ったために行われました)。
死亡7日後に、第XIII因子活性が6%に低下し、第XIII因子に対する抗体が存在していることが外注検査会社より報告されました。
著者らが後日dot blotを行ったところ、FXIII-サブユニットAに対する自己抗体が検出されました。
以上、重症AH13を救命するには迅速な診断が必要と考えられました。
<リンク>
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17| 出血性疾患