重症血友病における第VIII因子製剤とインヒビターの発症
論文紹介です。
参考:血友病、後天性血友病、rFVIIa、血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
「重症血友病における第VIII因子製剤とインヒビターの発症」
著者名:Gouw SC, et al.
雑誌名:N Engl J Med 10: 2254-2263, 2013.
<論文の要旨>
未治療の重症血友病Aの小児において、第VIII因子製剤の種類や製剤間の切替えが、インヒビター発症に関連するかどうかは不明です。
著者らは、重症血友病 A患者 574 例(第 VIII 因子活性<0.01 IU/mL、2000〜2010 年に出生)を対象に、最長 75 日間におけるすべての凝固因子製剤投与についてデータを集積しました。
主要転帰はインヒビター発症とし、インヒビターが 2 回以上陽性で、体内における第 VIII 因子活性の回復が低下している場合と定義しました。
その結果、インヒビターは 574 例中 177 例で発症しており(累積発症率 32.4%)、116 例では高力価のインヒビター(最高力価が 5 B.U./mL 以上)でした(累積発症率 22.4%)。
血漿由来製剤は、遺伝子組換え型製剤と比較して、インヒビター発症頻度は同じでした。
第二世代の全長組換え型製剤は、第三世代の全長遺伝子組換え型製剤と比較して、インヒビター発症は高率でした。
凝固因子製剤中のvon Willebrand因子含有量や製剤間の切替えは、インヒビター発症と無関係でした。
以上、遺伝子組換え第 VIII 因子製剤と血漿由来第 VIII 因子製剤におけるインヒビター発症は同率であり、製剤中von Willebrand因子含有量や製剤間の切替えは、インヒビター発症に関与していないと考えられました。
第二世代の全長遺伝子組換え製剤は、第三世代製剤と比較してインヒビター発症率が高い事が明らかになりました。
<リンク>
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34| 出血性疾患