2013年06月07日
医師国家試験:習慣性流産、深部静脈血栓症(3)
医師国家試験対策
32歳の女性
一昨日からの下肢の腫脹を主訴に来院した。3回流産歴がある。
左下肢に熱感を伴う有痛性の腫脹を認める。左足を背屈すると腓腹部に疼痛が生じる。
血液所見:赤血球370万、Hb11.0g/dl、白血球3,200、血小板8万、プロトロンビン時間<PT>12秒(基準10〜14)、APTT 62秒(基準対照32.2)。抗核抗体160倍(基準20以下)。
【治療】
現在はDVTの急性期であり、肺塞栓を併発しないように、へパリン類(未分画へパリン、低分子へパリンなど)による抗凝固療法を開始します。
急性期を脱することができたあとの慢性期の治療も重要です。
抗血栓療法による治療を継続します。
本症例は、深部静脈血栓症という静脈血栓症であるため、抗凝固療法を行いたいところですが、ワルファリンには開催奇形性の副作用の問題があり、若い女性には処方しにくいです。
患者と充分に相談の上、治療法を選択します。
抗血栓療法の分類
1. 抗血小板療法:
・ 血小板の働きを抑制する治療。
・ 血流が速い環境下における動脈血栓症(血小板血栓)に有効。
・ 脳梗塞(心房細動を除く)、心筋梗塞、末梢動脈血栓症などの予防に用いる。
・ 代表薬:アスピリン(内服薬)
2. 抗凝固療法
・ 凝固の働きを抑制する治療。
・ 血流が遅い環境下における静脈血栓症(凝固血栓)に有効。
・ 深部静脈血栓症、肺塞栓などの予防に用いる。
・ 心房細動からの脳塞栓(心原性脳塞栓)の発症予防にも用いる(※)。
・ 代表薬:ワルファリン(内服薬)、へパリン類(注射薬)
(※)心房細動では塞栓部位は脳動脈であるが、心内に血栓が形成される理由は心内血液滞留のためであり、血流が遅い環境下における凝固血栓の性格を有している。抗凝固療法は有効であるが抗血小板療法は無効である。
【参考】
習慣性流産のキーワードのみでも抗リン脂質抗体症候群(APS)を想起できるようにしたいです。
APSでは、動脈血栓症も静脈血栓症もみられます。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39| 医師国家試験・専門医試験対策