2013年06月08日
医師国家試験:血小板数低下、赤沈遅延
医師国家試験対策
48歳の女性
2か月前から腹痛と腹部膨満感と出現し、背痛を伴ってきたので来院した。
腹部超音波検査で両側の卵巣に腫瘤像を認めた。
赤血球306万、Hb11.0g/dl、白血球4,700、血小板3.2万。
血清生化学所見:AST33単位、ALT19単位、LDH521単位(基準370以下)、プロトロンビン時間18秒(基準10〜14)、血漿フィブリノゲン100mg/dl(基準170〜410)。赤沈3mm/1時間。
胃内視鏡写真&胃エックス線造影写真:スキルス胃癌
【ポイント】
48歳の若い女性であるが、腹痛と腹部膨満感が2ヶ月間継続しています。
背痛もみられるようになってきています。腹痛のみでなく背部痛もあるというのは、膵臓の症状なのでしょうか、あるいは何らかの悪性疾患があって、背部痛をきたすような転移があるのでしょうか。
症状のみでは、診断を絞り込むことができないために、胃カメラ、腹部エコー検査、CT(必要に応じて造影も)などの検査を進めていくことになるでしょう。
悪性疾患が疑われた場合には、PET検査も必要になるかも知れません。
【病態】
腹部エコー検査では両側の卵巣に腫瘤像がみられており、婦人科疾患や他臓器悪性疾患からの転移などが考えられます。
胃カメラおよび胃透視検査からは、胃癌(スキルス胃癌)がありますので、やはり、胃癌から卵巣への転移でしょう。
胃癌や結腸癌から卵巣への転移はクルーケンベルグ腫瘍としても知られています。
血液検査では、血小板数が3.2万と低下しているのが際立った所見です。フィブリノゲン100mg/dLと低下、PT18秒と延長しているのも注目されます。
進行した病態と考えられるにもかかわらず、赤沈は3mm/1hrと遅延しています。赤沈が遅延しているのは、フィブリノゲンが低下しているためです。
LDHが上昇していますが、悪性疾患ではしばしばみられる所見です。
以上より、転移性の胃癌に播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併していると考えられます。
DICの三大基礎疾患は、敗血症、急性白血病、固形癌です。
産科合併症の常位胎盤早期剥離、羊水塞栓、小児科でも遭遇するKasabach-Meritt症候群、救急部での外傷、心血管外科での動脈瘤なども基礎疾患として有名です。
DICの確定診断のためには、FDP、Dダイマーの測定が必須です。
また、凝固活性化マーカーのTAT、線溶活性化マーカーのPICも測定することでDICの病型分類が可能になります。
<赤沈亢進の理由>
1. ヘマトクリットの低下(貧血)
2. γグロブリンの上昇
3. フィブリノゲンの上昇
(備考)
上記は全て炎症反応としてみられる所見です。フィブリノゲンの低下したDICでは、病態は重篤であるにも関わらず赤沈は遅延します。昔は、重症の患者で赤沈遅延の所見をみたら、DICを疑うべきであると教育されたこともあります(現在はこのような診断はせずに直接フィブリノゲンを測定します)。
【治療】
DICの治療としてが、以下があります。上ほど重要です。本症例では、手術不能と考えられるために、抗がん剤治療(化学療法)とともにヘパリン類を投与することになるでしょう。
<DICの治療>
1. 基礎疾患の治療:最重要。
2. 抗凝固療法:以下より選択。
・ ヘパリン類:アンチトロンビン(AT)活性が低下している場合にはAT濃縮製剤を併用
・ トロンボモジュリン製剤
・ 合成プロテアーゼインヒビター
3. 補充療法:必要例のみ。
・ 濃厚血小板:血小板の補充
・ 新鮮凍結血漿:凝固因子の補充
4. 抗線溶療法:原則禁忌(血栓を増悪させるため)
【参考】
DICの基礎疾患に遭遇したら、血液凝固検査(FDP、Dダイマーなど)を行うことがDIC診断への第一歩です。
患者は重篤ですが、赤沈は遅延し、フィブリノゲンは低下します(敗血症のDICは別です)。
<リンク>
背痛もみられるようになってきています。腹痛のみでなく背部痛もあるというのは、膵臓の症状なのでしょうか、あるいは何らかの悪性疾患があって、背部痛をきたすような転移があるのでしょうか。
症状のみでは、診断を絞り込むことができないために、胃カメラ、腹部エコー検査、CT(必要に応じて造影も)などの検査を進めていくことになるでしょう。
悪性疾患が疑われた場合には、PET検査も必要になるかも知れません。
【病態】
腹部エコー検査では両側の卵巣に腫瘤像がみられており、婦人科疾患や他臓器悪性疾患からの転移などが考えられます。
胃カメラおよび胃透視検査からは、胃癌(スキルス胃癌)がありますので、やはり、胃癌から卵巣への転移でしょう。
胃癌や結腸癌から卵巣への転移はクルーケンベルグ腫瘍としても知られています。
血液検査では、血小板数が3.2万と低下しているのが際立った所見です。フィブリノゲン100mg/dLと低下、PT18秒と延長しているのも注目されます。
進行した病態と考えられるにもかかわらず、赤沈は3mm/1hrと遅延しています。赤沈が遅延しているのは、フィブリノゲンが低下しているためです。
LDHが上昇していますが、悪性疾患ではしばしばみられる所見です。
以上より、転移性の胃癌に播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併していると考えられます。
DICの三大基礎疾患は、敗血症、急性白血病、固形癌です。
産科合併症の常位胎盤早期剥離、羊水塞栓、小児科でも遭遇するKasabach-Meritt症候群、救急部での外傷、心血管外科での動脈瘤なども基礎疾患として有名です。
DICの確定診断のためには、FDP、Dダイマーの測定が必須です。
また、凝固活性化マーカーのTAT、線溶活性化マーカーのPICも測定することでDICの病型分類が可能になります。
<赤沈亢進の理由>
1. ヘマトクリットの低下(貧血)
2. γグロブリンの上昇
3. フィブリノゲンの上昇
(備考)
上記は全て炎症反応としてみられる所見です。フィブリノゲンの低下したDICでは、病態は重篤であるにも関わらず赤沈は遅延します。昔は、重症の患者で赤沈遅延の所見をみたら、DICを疑うべきであると教育されたこともあります(現在はこのような診断はせずに直接フィブリノゲンを測定します)。
【治療】
DICの治療としてが、以下があります。上ほど重要です。本症例では、手術不能と考えられるために、抗がん剤治療(化学療法)とともにヘパリン類を投与することになるでしょう。
<DICの治療>
1. 基礎疾患の治療:最重要。
2. 抗凝固療法:以下より選択。
・ ヘパリン類:アンチトロンビン(AT)活性が低下している場合にはAT濃縮製剤を併用
・ トロンボモジュリン製剤
・ 合成プロテアーゼインヒビター
3. 補充療法:必要例のみ。
・ 濃厚血小板:血小板の補充
・ 新鮮凍結血漿:凝固因子の補充
4. 抗線溶療法:原則禁忌(血栓を増悪させるため)
【参考】
DICの基礎疾患に遭遇したら、血液凝固検査(FDP、Dダイマーなど)を行うことがDIC診断への第一歩です。
患者は重篤ですが、赤沈は遅延し、フィブリノゲンは低下します(敗血症のDICは別です)。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:19| 医師国家試験・専門医試験対策