金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年07月19日

腹部/解離性大動脈瘤とDIC(3):ステントグラフト治療

腹部/解離性大動脈瘤とDIC(2):凝固線溶活性化より続く。

腹部大動脈瘤・解離性大動脈瘤とDIC(3)ステントグラフト治療

大動脈瘤・大動脈解離の治療

大動脈解離では、偽腔の血栓化がすすみ病態が安定すればそれに伴う凝固線溶活性化も終息することが多いです。

一方、大動脈瘤の場合、凝固線溶活性化の原因である瘤に対する根本治療(人工血管置換術、ステントグラフト内挿術)がない場合、併存する凝固線溶活性化が自然軽快することはまずありません。

凝固線溶活性化を有する大動脈瘤は、瘤内血栓の状態も不安定であり、破裂の危険性が高いともいわれています。


従来、大動脈瘤に対する外科治療は人工血管を用いた置換手術が中心でしたが、病変部位によっては体外循環を要するなど侵襲度の大きい治療でした。

近年、大動脈解離・大動脈瘤に対する新しい治療手段として、ステントグラフト内挿術がその低侵襲度と治療効果の面から非常に有望視されています(図)。

ステントグラフトは人工血管にステントと呼ばれるバネ状の金属を取り付けた人工血管で、これを圧縮して細いカテーテル内に収納して使用します。

下肢動脈を数cm切開した部位よりカテーテルを挿入し、病変箇所まで運んだところで収納してあったステントグラフトを放出するため、開胸や開腹は不要です。

放出されたステントグラフトは金属のバネの力と血圧によって拡張し血管内壁に固定されます。

当初、ステントグラフト内挿術は人工血管置換術と異なり瘤切除や瘤内血栓除去を行わないため、瘤内で急速な血栓化が起こる可能性があり術後消費性凝固障害、凝固線溶活性化が強く表れる可能性が懸念されていました。

しかしグラフトの材質や治療技術の進歩もあり、現時点では術後に問題となるような凝固線溶異常の増悪はないものと考えられています。

Shimazaki T, et al: Blood coagulation and fibrinolytic response after endovascular stent grafting of thoracic aorta. J Vasc Surg. 2003; 37: 1213-8.


(続く)腹部/解離性大動脈瘤とDIC(4):ヘパリン類の治療


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:49| DIC