2013年07月21日
腹部/解離性大動脈瘤とDIC(5):実際の臨床
腹部/解離性大動脈瘤とDIC(4):ヘパリン類の治療より続く。
腹部大動脈瘤・解離性大動脈瘤とDIC(5)実際の臨床
今後の診療技術進歩に伴い治療対象患者が拡大することで、合併症も多くより複雑な病変を有する大動脈疾患患者が増加すると考えられます。
今まで以上に大動脈疾患を背景とした凝固線溶異常(DIC)、血小板減少を呈する患者に遭遇する機会が多くなるでしょう。
血小板数減少の背景にある重篤な血管疾患を見逃すことのないよう、各診療科が互いに情報を共有し協力しあう診療体制が重要と考えられます。
実際の臨床
大動脈瘤に伴う凝固線溶異常(DIC)およびそれに伴う出血傾向は、大動脈瘤に対する根本的治療を行うことによって軽快しますが、術前に出血症状を伴う場合、より安全な周術期管理を行うためにもあらかじめ凝固線溶異常の是正を行っておくべきです。
当科では心臓血管外科主治医より相談を受けた場合、臨床症状および血液検査を確認し術前の薬物療法が必要と考えられれば手術予定日より1~2週間前に入院し、蛋白合成酵素阻害剤(メシル酸ナファモスタット;フサン®など)や、ヘパリン類とトラネキサム酸(トランサミン®)併用療法による治療を行っています。
治療開始後は出血傾向に加え、各種血液検査値を確認し、特に血小板数、フィブリノゲン、α2PI値の改善、正常化に重点をおいて薬剤の調整を行います。
なお、DICに対する抗線溶療法(トラネキサム酸)は、致命的な血栓症を誘発することがあり、本来は禁忌です。
線溶亢進型DICの病型診断が確実であることの確認と(高度に専門的知識を要します)、へパリン類の併用が必須です。
必ず、前もって専門家にコンサルトする必要があります。
(続く)腹部大動脈瘤・解離性大動脈瘤とDIC(6):症例提示へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42| DIC