2013年07月22日
腹部大動脈瘤・解離性大動脈瘤とDIC(6):症例提示
腹部大動脈瘤・解離性大動脈瘤とDIC(6)症例提示
【症例】72歳男性。
【病歴】
43歳時より高血圧に対し内服加療あり。元愛煙家。
63歳時、腎機能障害を指摘され精査目的に入院した際、胸腹部大動脈瘤を指摘され、71歳時に腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術が施行された。
手術侵襲を考慮し胸部大動脈瘤については経過観察する方針となっていた。
今回特に誘因なく左大腿部の疼痛に加え、翌日にはふらつき、息切れを自覚したため医療機関を受診。貧血の進行と左大腿部の皮下血腫を認め、精査加療目的に入院となった。
【入院時血液検査所見】
Hb 7.0g/dL, 血小板数 9.1万/μL, PT 13.1秒, APTT 29.0秒, フィブリノゲン 68mg/dL, AT 114%, プラスミノゲン 79%, α2PI 47%, TAT 82.5ng/mL, PIC 18.4μg/mL, FDP 172.7μg/mL, DD 79.9μg/mL, Cr 2.6mg/dL
【入院時CT所見】
左臀筋深部に血腫形成あり。腹部大動脈瘤人工血管置換術後。人工血管周囲はseroma(漿液腫;血漿成分がもれて貯留している所見)を疑う所見あり。経過で増大。
胸部大動脈瘤、右膝窩動脈瘤あり。画像供覧(図)。
【経過】
入院後出血に伴う貧血の進行をみとめたため、赤血球輸血(RCC 6単位)をおこなった。
同時に 線溶亢進型DICに対しメシル酸ナファモスタット(フサンなど)200mg/24h持続点滴を開始したところ出血症状、DICの改善がみられた。
しかし、メシル酸ナファモスタットの副作用と考えられる高K血症をみとめたため、同剤を中止しヘパリンの持続点滴およびトラネキサム酸(トランサミン®)の内服を開始した。
その後、ヘパリン持続点滴をヘパラン硫酸(オルガラン®)週2回(月、木)の静注に切り替え、切り替え後も病態が安定していることを確認した上で退院となった。
外来でも引き続き週2回のヘパラン硫酸静注およびトラネキサム酸内服を継続しその後は出血症状を認めることなく経過している(本症例は腎機能障害を考慮しヘパラン硫酸の投与頻度を低く設定している)。
(続く)腹部大動脈瘤・解離性大動脈瘤とDIC(7)お役立ち情報へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53| DIC