金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年09月11日

診断が困難であった小児血友病

論文紹介です。

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「診断が困難であった小児血友病の2例

著者名:De Luca M, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinoysis 24: 645-648, 2013.


<論文の要旨>

血友病Aは、第VIII因子が先天性に欠損する伴性劣性遺伝の出血性素因です。

著者らは珍しい病状であったため診断の困難であった2例を報告しています。


1例目は生後10ヶ月の女児であり、24時間以内に出現した頚部腫瘤のために受診しました。

反復性自然血腫での受診歴がありましたが、出血性疾患の家族歴はありませんでした。

画像のみでは確定診断できず、病理学的に血腫と診断されました。

染色体解析では第VIII因子イントロン22に新規の変異がみられ、偏ったX染色体不活性化を伴っていました。


2例目は、新生男児でてんかんの既往を有していました。

脳MRIでは、四丘体槽に血管奇形をきたし小脳の圧迫所見と水頭症が当初の読影結果でした。

血液検査では、第VIII因子活性が著減していました。

画像を再評価したところ、血管奇形は否定され血腫と診断されました。

凝固異常の家族歴はありませんでした。

遺伝子検査では、第VIII因子遺伝子(イントロン22を含む)の再構成がみられました。


家族歴の欠如、画像で診断困難な血腫、女性、新生児などでは、血友病Aの診断は困難となり、誤診がありうると考えられました。



<リンク>
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32| 出血性疾患