先天性アンチトロンビン(AT)欠損症の妊娠管理
論文紹介です。
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「先天性AT欠損症の妊娠管理」
著者名:Bramham K, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 110: 550-559, 2013.
<論文の要旨>
先天性アンチトロンビン(AT)欠損症妊娠に対して加療を行わないと、母体の静脈血栓塞栓症(VTE)をきたし、胎児死亡の原因ともなります。
妊娠中の血栓予防が重要ですが、用量については一定の見解がありません。
著者らは、先天性AT欠損症女性における血栓症発症と妊娠経過につき後方視的解析を行いました。
VTEの既往のない女性に対しては、16週までは低分子ヘパリンであるエノキサパリン40mg/日毎日投与し、その後は40mg x 2回/日としました(参考:ヘパリン類)。
VTEの既往のある症例ではエノキサパリン1mg/kg/日で開始し、16週からは1日2回に増量しました。
血栓予防治療は、陣痛開始時または帝王切開の12時間前に中止し、AT濃縮製剤50IU/kgが投与されました。
出産後に血栓予防が再開されました。
著者らは、AT欠損症の女性11例で18妊娠を経験しています。
17妊娠(94%)では成功しました。
妊娠期間の中央値39W(30〜41W)、出生児体重の中央値2995g(910〜4120g)でしたが、児の6/17(35%)は妊娠期間に比較して低体重でした。
4妊娠ではVTEの合併がありました。
以上、先天性AT欠損症妊娠に対しては妊娠期間中の低分子ヘパリンと、分娩前から産褥期間のAT濃縮製剤が有効で、VTE発症率は以前の報告よりも低いと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00| 出血性疾患