ハイド症候群:大動脈弁狭窄症と後天性von Willebrand病
論文紹介です。
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「大動脈弁狭窄症が引き起こす後天性von Willebrand病:ハイド症候群」
著者名:田村 俊寛。
雑誌名:日本血栓止血学会雑誌 24: 295-297, 2013.
<論文の要旨>
ハイド症候群は、大動脈弁狭窄症に合併した消化管血管異形性(gastrointestinal angiodysplasia)からの消化管出血であり、この貧血の原因は消化管粘膜に形成されたangiodysplasiaと後天性von Willebrand病2A型(フォンウィルブランド因子の高分子マルチマーの欠如)を併発していることによる消化管出血であると報告され、高度の大動脈狭窄症の約20%に発症するとも言われています。
大動脈弁狭窄症患者になぜangiodysplasiaを発症するかに関しては、1.大動脈弁の石灰化などと同様に、一連の加齢に伴う変化(形成)や、2.大動脈弁狭窄症により消化管粘膜が低潅流となり、これにより交感神経系が刺激され腸管血管の平滑筋細胞が弛緩し、局所の血管が拡張するのではないか、などが原因として推察されています。
大動脈弁狭窄症では、狭窄した大動脈弁により生じたhigh shear stressの影響下のおいては、von Willebrand因子が引き延ばされADAMTS13に切断されやすくなると考えられています。
著者らは高度大動脈弁狭窄症31例について、von Willebrand因子のマルチマー解析を行いました。
結果は19例(61%)に後天性von Willebrand病2A型を合併していました。
中等度から高度の大動脈弁狭窄に貧血を合併していれば、まず本疾患を疑うことが重要です。
最終的には血液検査でvon Willebrand因子のマルチマー解析を行い、高分子マルチマーの欠損を確認すれば診断できます。
根治術としては、大動脈弁狭窄症の解除すなわち大動脈弁置換術が有効とされています。
短時間で高分子マルチマーは正常化するといわれています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 18:50| 出血性疾患