金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年09月25日

遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)とベバシズマブ(アバスチン)

論文紹介です。

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「遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)に対するベバシズマブ(アバスチン)治療」

著者名:Kanellopoulou T, et al.
雑誌名:Expert Opin Biol Ther 13: 1315-1323, 2013.


<論文の要旨>

遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary haemorrhagic telangiectasia : HHT、オスラー病)は、鼻出血、粘膜皮膚の毛細血管拡張や臓器における動静脈奇形に起因するシャントや出血を特徴とする先天性出血性素因です。


HHTの病態には血管新生が意義を有していると考えられているため、血管新生インヒビターは魅力的な治療薬となる可能性があります。


著者らは、HHTとベバシズマブアバスチン:VEGFに対するモノクローナル抗体)に関する文献検索を行いました。

特にHHTの病態、薬物の作用機序、HHT関連症状への効果、安全性について注目しました。


ベバシズマブの経静脈的全身投与は、鼻出血、消化管出血、肝における動静脈奇形を改善しました。

安全面に関しては、一部高血圧症がみられましたが、他には問題ありませんでした。

ベバシズマブの鼻腔内局所投与も、鼻出血の頻度や出血量を減らし、輸血必要量も低下しました。


HHTの臨床試験がないため、患者選択基準や推奨度は提言できませんが、輸血を必要とするような致命的な鼻出血に対してはベバシズマブの局所投与は有用かも知れません。

また、内蔵器に病変を有して致命症となるような症例に対してはベバシズマブの全身投与が有用かも知れません。


<リンク>
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:14| 出血性疾患