先天性凝固異常症(5)第VII因子欠乏/異常症
先天性凝固異常症(5)第VII因子欠乏/異常症
第VII因子欠乏/異常症
本症はRBDの中で最も頻度が高く、2010年World Federation Hemophilia Annual Global Surveyの結果では全RBDの28%、本邦の平成23年度全国調査では22%を占めます。
発症頻度は地域によって異なり、日本では200万に1人、米国、オーストラリアでは50万人に1人、イギリスでは10万人に1人と推定されます。
症状
一般的に出血傾向は血友病より軽いですが、FVII活性が1%以下を呈するホモ接合体や複合へテロ接合体例で、重症血友病に類似した重篤な出血傾向を生じることがあります。
しかしながら、本症ではFVII活性と出血症状の重症度が一致しないことが知られており、FVII活性が1%以下でも無症候の場合もあります。
通常、皮膚粘膜出血(皮下出血、鼻出血、性器出血)、抜歯後出血、外傷後出血が主ですが、関節出血、消化管出血、頭蓋内出血、血尿、月経過多、分娩後異常出血なども認めます。
ヘテロ接合体例は無症候であるといわれてきましたが、最近の報告ではヘテロ接合体499例のうち19%が症候性で、主に皮膚粘膜出血を認めることが判明しました。
一方、まれに血栓症を伴う症例もあります。
検査所見
本症は、出血症状が軽度あるいは無症候であるために、術前検査などで発見されます。
PT延長を示しますが、APTTは基準範囲以内です。
FVII活性が低下し、後天性FVIIインヒビター発生や、肝機能障害、VK欠乏などが除外された場合、先天性FVII欠乏症を疑います。
FVIIaと組織因子との相互作用領域に変異がある場合は、FVII活性の測定に用いる組織因子(TF)の動物種の違いにより検査成績に乖離を示しますので、ヒトTF、ウサギTF、ウシTFの3種類を測定試薬として用います。
治療
関節内出血や頭蓋内出血などの重症出血患者、ならびにFVII活性低下・出血の既往・手術部位によって過剰出血が予測される術前患者では、FVIIを十分含む製剤による補充療法が必要となります。
現在日本で使用できる製剤には、遺伝子組換え活性型FVII製剤(rFVIIa)と血漿由来FIX複合体製劑があります。
FVII活性が10-25%あれば、止血が可能です。
rFVIIaは15〜30 mg/kg (0.75〜1.5 K IU/kg)を止血が得られるまで4〜6時間ごとに投与することで安全かつ有効に止血が図れますが、高価な薬剤です。
一方、複合型FIX濃縮製剤で補充療法を行うと、血栓症などの合併症を併発しやすいので注意が必要です。
また、FFPによる補充療法は、FVIIの半減期が4〜6時間と短く循環血液量の過剰をきたすため困難なことが多いです。
一方、無症候の患者で侵襲の少ない手術(抜歯など)の場合は、トラネキサム酸の投与が有効です。
<リンク>:臨床に直結する血栓止血学
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:40| 出血性疾患