先天性凝固異常症(4)第V因子欠乏/異常症
先天性凝固異常症(3)先天性プロトロンビン低下/異常症より続く。
先天性凝固異常症(4)第V因子欠乏/異常症
第V因子欠乏/異常症
本症はパラ血友病(血友病類似症)とも称され、100万人に1人の発生頻度と推定されます。
症状
ホモ接合体では、頭蓋内出血などの重症例もありますが、多くは血友病に比べて出血症状は軽く、無症候の場合もあります。
皮膚粘膜出血(歯肉出血、鼻出血)、血腫および過多月経が最も一般的な症状です。
血漿FV活性と出血症状の重症度は、必ずしも一致しません。
FVの80%は血中、20%は血小板α顆粒中に存在しますので、出血症状は血小板中のFV量も考慮する必要があります。
FV異常症は血栓傾向をきたす場合もあり、特にArg506がGlnに置換したFV Leiden変異は欧米で高率に認められる先天性血栓性素因の一つとして重要です。
日本人を含む東洋人には、FV Leidenは存在しませんが、活性化プロテインC(APC)抵抗性を示し血栓症を発症したFV異常症は本邦でも2家系認められまあす。
検査所見
PT、APTTともに延長しますが、ヘパプラスチンテストは正常です。
FV活性の低下を認め、クロスミキシング試験にて後天性FVインヒビターを否定できた場合、先天性FV欠乏/異常症を疑います。
FV Leidenは、FVの凝固活性測定値には異常を認めませんので、APC抵抗性試験を行う必要があります。
治療
外傷・抜歯・外科手術時、重症出血時などの止血管理には、FFP投与を行います。
FFP中のFVは速めに失活するため、調整後2カ月以内のFFPを使用することが重要です。
FVの生体内回収率は50〜100%、半減期は36時間です。
FFPはまず15〜20ml/kgを静注し、続いてFV活性20%を維持するように補充します。
鼻出血や歯肉出血には、トラネキサム酸が有効です。
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<リンク>:臨床に直結する血栓止血学
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:56| 出血性疾患