先天性凝固異常症(7)第XI因子欠乏/異常症
先天性凝固異常症(7)第XI因子欠乏/異常症
第XI因子欠乏/異常症
本症は血友病Cとも称されましたが、出血症状は血友病に比べて軽いです。
100万に1人の発生頻度と推定され、そのほとんどがアシュケナージ系ユダヤ人です。
アシュケナージ系ユダヤ人における頻度は極めて高く、一般人口の8%程度がヘテロ接合体のキャリアです。
日本人も報告が多く、40例以上が見出されています。
症状
自然出血は起こさず、外傷や外科的処置後の出血がほとんどで、特に線溶活性が高い口腔内や泌尿生殖器領域からの出血が特徴的です。
女性の場合は過多月経を認めます。
関節・筋肉内出血は稀です。
活性値と出血症状はまったく相関せず、FXI活性が1%未満の重症型でも無症候か術後の出血を認める程度の場合もあれば、軽症型で出血傾向を示す場合もあります。
ヘテロ接合体例は、臨床的には出血傾向を示しません。
検査所見
出血症状が軽度であり、術前検査などで偶然発見される場合が多いです。
APTTが著明に延長し、PTは基準範囲内にあります。
FXI活性は、過多月経のスクリーニング検査の項目としては、重要です。
FXI活性と抗原量の乖離を示す分子異常症は極めて稀であり、通常は活性も抗原量も同程度に低下するI型欠損症を呈します。
FXI活性は、通常ホモ接合体あるいは複合ヘテロ接合体例は15%未満、ヘテロ接合体例は25-70%を示します。
治療
本症では自然出血は稀なため、外傷後あるいは手術に際して補充療法を行います。
海外では血漿分画製剤としてFXI製剤があるが、本邦では補充療法としてFFPを投与します。
最小止血レベルは15-20%とされていますが、大手術時、または前立腺・下部尿路系、鼻・扁桃腺など線溶活性が高い部位の手術や外傷時には出血傾向が強く出現しますので、FXI活性を7日間、45%以上に維持することが推奨されています。
FXIの生体内回収率は90%、半減期は40-70時間で、FFP投与量は5-20 mg/kg/日で通常適切なFXIレベルに保つことが可能です。
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<リンク>:臨床に直結する血栓止血学
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36| 出血性疾患