金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年04月19日

救急領域の出血と凝固異常:von Willbrand病(VWD)

論文紹介です。

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「救急領域における出血と凝固異常」

著者名:Hunt MD.
雑誌名:N Engl J Med 370: 847-859, 2014.


<論文の要旨>

このN Engl J Medの総説では、救急領域で遭遇する出血や凝固異常について論じています。

その中で、von Willbrand病(VWD)の部分のみを抄録します。


もし説明できない出血がみられたら、先天性出血性素因の症例ではあるが異常な出血症状出現が遅い時期になった症例でないか考慮する必要があります。

出血症状に関する既往歴や家族歴を聴取は重要です。

外傷や手術後に出血が持続する場合には、軽症VWDのことがあります。


後天性VWD(AVWD)は、自己抗体、骨髄増殖性疾患、リンパ増殖性疾患に合併することがあります。

あるいは、血管内または体外循環に伴う高ずり応力によってvon Willbrand因子(VWF)の高分子マルチマーが分解されることによっても発症します。

体外循環中の高ずり応力は、膜型肺による体外酸素化法や、左心循環補助装置でも生じえます。

大動脈弁狭窄症による血管内高ずり応力も、AVWDの原因となり胃腸出血をきたします(Heyde症候群)。


AVWDの出血は、DDAVPまたはVWF含有凝固因子製剤で治療されますが、後者の方がより有効です。

抗線溶剤は、粘膜出血を軽減させることができます。

AVWDでは、可能であれば高ずり応力をきたしている原因を除去することが最重要です。


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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18| 出血性疾患