多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(2)
多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(1)より続く
多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(2)
なお、活性化プロテインC抵抗性に関しては、先天性Factor V Leidenではなく、多発性骨髄腫に一過性に合併する後天性のものが知られています(約10%の症例で出現)。
Jiménez-Zepeda VH, Domínguez-Martínez VJ. Acquired activated protein C resistance and thrombosis in multiple myeloma patients. Thromb J. 2006; 4: 11.
Elice F, et al. Acquired resistance to activated protein C (aAPCR) in multiple myeloma is a transitory abnormality associated with an increased risk of venous thromboembolism. Br J Haematol. 2006; 134: 399-405.
この活性化プロテインC抵抗性の合併した症例に対して、サリドマイドを含む治療を行いますと、静脈血栓塞栓症の発症頻度は、12%から66%に上昇するという報告が見られています。
多発性骨髄腫における活性化プロテインC抵抗性の機序としては、プロテインCに対する自己抗体産生の可能性を指摘する報告も見られています。
一方、アンチトロンビン・プロテインC・プロテインSのレベル、抗リン脂質抗体やFactor V Leidenの有無は、多発性骨髄腫に対するサリドマイド治療関連の血栓症とは無関係と考えられています。
多発性骨髄腫に対して他剤とともにサリドマイドやその誘導体を投与して血栓症を誘発しやすくなる理由ですが、その機序については不明な点が多いです。
ただし、いくつかの示唆に富む報告が見られています。
サリドマイドとデキサメタゾンの併用療法を行っている症例では、血中トロンボモジュリン濃度が半減以下に低下し、3ヶ月経過しても回復しない、血管内皮におけるprotease-activated receptor(PARs)の発現がドキソルビシン単独では低下しますが、サリドマイドと併用するとPARsの発現が上昇します、サリドマイド投与により、von Willebrand因子抗原量が上昇し、特に静脈血栓塞栓症症例での上昇が有意に高度です、などの報告があります。
Corso A, et al. Modification of thrombomodulin plasma levels in refractory myeloma patients during treatment with thalidomide and dexamethasone. Ann Hematol. 2004; 83: 588-591.
Kaushal V, et al. Thalidomide protects endothelial cells from doxorubicin-induced apoptosis but alters cell morphology. J Thromb Haemost. 2004; 2: 327-334.
Minnema MC, et al: Extremely high levels of von Willebrand factor antigen and of procoagulant factor VIII found in multiple myeloma patients are associated with activity status but not with thalidomide treatment. J Thromb Haemost. 2003; 1: 445-449.
(続く) 多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(3)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18| 血栓性疾患