新しいDIC診断基準へ(4)分子マーカー:TAT・SF・F1+2
新しいDIC診断基準へ(3)プロトロンビン時間(PT)より続く
新しいDIC診断基準へ(4)分子マーカー:TAT・SF・F1+2
DICの本態は全身性持続性の著明な凝固活性化です。
このDICの本態を反映する分子マーカーを是非とも採用すべきと考えられます。
具体的には、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、可溶性フィブリン(SF)、プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)といったマーカーです(図:TAT・SF・F1+2)。
これらの分子マーカーを即日測定可能な施設が少ないという意見も聞かれますが、この状況を何年も続けることは問題でしょう。
むしろ、これらの分子マーカーを診断基準に組み込むことによって、有用なマーカーの普及に向けて原動力にすべきではないかと考えられます。
ただし、これらの分子マーカーは採血困難者では偽高値となる場合がありますので、FDPやD-ダイマーの上昇度に比較してTATやSFが著増している場合には再検するなどの配慮が必要と考えられます。
また、即日の結果が間に合わない場合でもDICの本態を評価するこれらのマーカーを確認して、DIC診断の感度と特異度を上げたいものです。
我が国では、TATは一社のみですが、SFは複数社から発売されています。
また正確には、SF(可溶性フィブリン)とFMC(フィブリンモノマー複合体)は異なったマーカーです。
今回は、SFとFMを合わせて、SFMC(可溶性フィブリンモノマー複合体)とします。
SFMC測定試薬として、日本ではFMC(ロッシュ)とSF(三菱化学メディエンス、積水メディカル)があります。
FMCはFDP分画も測りこんでいますのでFMC とFDPの同時測定は意味がないのに対して、SFは純粋に凝固活性化を評価していますのでFDPとの同時測定の意義があります。
ただし、SFとFMCが必ずしも意識して区別されていない現在の臨床環境を考えますと、現時点では両者を厳密に区別して扱わなくてもよいかもしれません。
なお、TATとSFは併行して変動して良いはずですが、しばしば乖離します。
TATが軽度上昇にとどまるにもかかわらずSFが著増する場合もありますし、一方TATが明らかに上昇しているにもかかわらずSFの上昇度が軽度である場合もあります。
このあたりは興味ある臨床研究テーマと考えられます。
なお、予後不良例では、TAT上昇が軽度でもSFが著増する印象です。
ATが十分に機能せずに、ATによる補足をすり抜けたトロンビンがフィブリノゲンに作用するのかも知れません。
DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47| DIC