金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2014年05月25日

新しいDIC診断基準へ(8)アンチトロンビン(AT)

新しいDIC診断基準へ(7)血小板数より続く

新しいDIC診断基準へ(8)アンチトロンビン(AT)

アンチトロンビン(AT)の低下はDICにおける特徴的所見と考えられてきた歴史があります。

確かに、敗血症に合併したDICではATが低下しやすいです。

一方で、急性前骨髄球性白血病(APL)のように、著明な凝固活性化がみられるにもかかわらず(TATが著増するにもかかわらず)、全くATが低下しない基礎疾患もあります。

APL以外の急性白血病でも低下しないことが多いですし、固形癌でも低栄養や肝不全の合併がなければ比較的ATは低下しません。


ATが低下している場合であっても、肝予備能低下、血管外への漏出、顆粒球エラスターゼによる分解など、DIC以外の要素で低下していることの方が多いです。

また、ATは本来DICと無関係であるはずの血清アルブミンと相関しやすいことが数々の報告で知られています。

補足:AT濃縮製剤の適応を判断するためにAT活性を測定しますが、即日結果がでない場合でもアルブミンが著減している例では、ほぼ間違いなくAT活性も低下しています。


一方で、ATを測定しやすい環境をつくることで治療法選択に直結する(DICに対するAT濃縮製剤の使用は日本ではAT70%以下で認められています)、感染症においてはATを採用することでDIC診断の感度が向上するといったメリットもあります。

また、ATがDICの予後を反映するという論文が多数報告されています。

もし、診断基準から臨床症状(臓器障害)の項目を削除する場合は臓器障害を反映するマーカー(AT, PT)を組込んだ方が良いという考えもあるでしょう。

確かにAT低下はDICに特異的なマーカーではないかもしれませんが、DIC以外の原因により変動するマーカーはATのみでなくほとんどのマーカーが該当します。


DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 
<リンク>
「臨床に直結する血栓止血学」

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30| DIC