金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年06月05日

血栓/血管内皮:CBT(コアカリ)

CBT(コアカリ)の問題紹介と解説です。受験生の記憶による再生問題ですので、実際の問題とは違っている可能性があります。

血栓形成を促進させる因子はどれか.

a プロスタサイクリン
b アンチトロンビンIII
c トロンボキサンA2
d 一酸化窒素
e プラスミノーゲンアクチベーター


(解説)

抗血栓的に作用する因子であるか、向血栓的に作用する因子であるかを理解していれば解答可能です(参考:血管内皮:トロンボモジュリン、ヘパリン様物質、PGI2、NO、t-PA)。

a プロスタサイクリン(別名:PGI2)は血管内皮から産生されて、血小板機能抑制作用、血管拡張作用(血流を増加させる)により、抗血栓的に作用します。

b アンチトロンビンIII(ATIII)は、最近は単にアンチトロンビン(AT)と呼ばれることが多いです。トロンビンや活性型第X因子(FXa)などの活性型凝固因子と1対1結合することで抗凝固活性を発揮します。ATはヘパリンと結合することで、抗凝固活性が飛躍的に増強します。

c トロンボキサンA2(TXA2)は血小板から産生されて、血小板機能活性化作用、血管収縮作用(血流を減少させる)ことで、向血栓的に作用します。

d 一酸化窒素(nitric oxide:NO)はPGI2同様に、血管内皮から産生されて、血小板機能抑制作用、血管拡張作用により、抗血栓的に作用する。

e 組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)は血管内皮から産生される線溶因子です。t-PAはプラスミノゲンをプラスミンに転換して、プラスミンが血栓(フィブリン)を分解して、FDPにします。


(正解)
c

(備考)

 血管内皮の抗血栓機序
血管内皮には上記のような抗血栓作用を有した物質が存在します。

1)    トロンボモジュリン(TM):トロンビン(T)と結合するのみでなく、トロンビン-トロンボモジュリン複合体は、プロテインC(PC)を活性型プロテインC(APC)に転換します。

APCは、活性型V因子(Va)と活性型VIII因子(VIIIa)を不活化することでも、抗凝固活性を発揮します。

2)    ヘパリン用物質:抗凝固作用を有するアンチトロンビン(AT)と外因系経路インヒビター(TFPI)が結合しています。

3)    一酸化窒素(NO):血小板機能抑制作用、血管拡張作用を有します。

4)    PGI2:NOと同じ。


<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34| 医師国家試験・専門医試験対策