金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年07月25日

血液内科学系統講義試験:先天性アンチトロンビン(AT)欠損症

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)


問19.以下の文中で(   )に入るものはどれか。1つ選べ。

20代女性。

家系内調査にて先天性アンチトロンビン(AT)欠損症の診断を受けていたが、無症状のため未治療であった。

妊娠7週ごろ、左下肢腫張と疼痛を認めたため外来を受診した。

血液検査:AT活性 43%、PC活性 84%、PS活性 56%(妊娠のために後天的に低下)、FDP 4.7μg/ml、D-ダイマー 2.0μg/ml、下肢静脈エコー検査にて左後脛骨静脈に血栓を認め深部静脈血栓症と診断された。

未分画ヘパリンの投与とAT製剤の適宜補充により血栓は縮小し、分娩・産褥期にはAT活性を100%以上に保つようAT製剤を補充することにより、合併症なく無事挙児を得ることができた。

産褥期も血栓症の増悪は認めず、ヘパリン治療をワルファリン内服に切り替えて抗凝固療法を継続した。

ちなみに、家族歴は父がAT欠損症にて(        )、叔父(父方)が門脈血栓、祖母(父方)が脳静脈洞血栓症を発症しており、家系内に多くの血栓症を認める典型的な先天性AT欠損症の一家系である。

a.    脳梗塞
b.    心筋梗塞
c.    閉塞性動脈硬化症
d.    網膜中心動脈閉塞症
e.    上部腸間膜静脈血栓症


(解説)

この問題は、サービス問題です。試験時間内に、勉強していただけるようにとの思いから問題を作成しました。

先天性AT欠損症は、深部静脈血栓症、肺塞栓、脳静脈洞血栓症などの静脈血栓症を発症しやすくなります。e以外は、動脈血栓症です。

なお、妊娠や女性ホルモン療法で、プロテインS活性が低下することも是非知っておいていただきたいです。妊娠ではプロテインS活性が低下しますので、妊娠中の採血で先天性プロテインS欠損症と誤診しないでいただければと思います。


(正答)e

 
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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:46| 医師国家試験・専門医試験対策