金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年10月18日

がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法):モニタリング

がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(5)

がん患者と抗血栓療法のインデックス


<抗凝固療法のモニタリング

抗凝固薬のうち経口薬であるワルファリン、注射薬であるヘパリンともにモニタリングを適切に行うことで安全かつ効果的な治療を継続できます。

その際、効果、安全性の両面からの評価は肝要です。

新規経口抗凝固薬はまだ定まったモニタリング法はないため、表では私案として記載しました。

 

薬 剤 効 果 副作用(出血)
未分画へパリン FDP、Dダイマー、TAT、SFなど APTT(通常1.5〜2.0倍)(※1)
低分子へパリン FDP、Dダイマー、TAT、SFなど APTT(常用量では延長しない)
ダナパロイド FDP、Dダイマー、TAT、SFなど APTT(常用量では延長しない)
ワルファリン F1+2、Dダイマー、TAT、SFなど PT-INR(通常2.0〜3.0)(※1)
新規経口抗凝固薬 F1+2、Dダイマー、TAT、SFなど PT、APTT(※2)
アスピリン(※3)
な し な し


TAT:thrombin-antithrombin complex(トロンビン-アンチトロンビン複合体)

SF:soluble fibrin(可溶性フィブリン)

F1+2:prothrombin fragment 1+2(プロトロンビンフラグメント1+2)


(※1)

APTTが1.5〜2.0倍に延長していても効果を発揮しているとはかぎらない。

APTTが過度に延長している場合には出血のリスクがあると考えるべきである。

APTTが1.5〜2.0倍の状態でかつ効果判断のマーカーをチェックしたい。

PT-INRについても同様に判断する。


(※2)

新規経口抗凝固薬(NOAC)

ダビガトランはAPTTの方が延長しやすい。

イグザレルト、エドキサバンはPTの方が延長しやすい。

アピキサバンはいずれも延長しにくい。

ただし、用いる試薬によって感受性が大きく異なるため注意を要する。

いずれのNOACともに内服2〜3時間後に血中濃度がピークとなるが、そのポイントでのPT、APTTの延長が想定範囲内であることを確認する。

万一、トラフでのPT、APTTが明らかに延長していれば出血のリスクがある。


(※3)

アスピリンなどの抗血小板薬のモニタリングは研究室レベルではいくつか試みられているが、臨床の場で簡便にチェックできるマーカーはない。


(続く)がん患者と抗血栓療法のインデックス


<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52| 抗凝固療法