がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法):モニタリング
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(5)
<抗凝固療法のモニタリング>
抗凝固薬のうち経口薬であるワルファリン、注射薬であるヘパリンともにモニタリングを適切に行うことで安全かつ効果的な治療を継続できます。
その際、効果、安全性の両面からの評価は肝要です。
新規経口抗凝固薬はまだ定まったモニタリング法はないため、表では私案として記載しました。
薬 剤 | 効 果 | 副作用(出血) |
未分画へパリン | FDP、Dダイマー、TAT、SFなど | APTT(通常1.5〜2.0倍)(※1) |
低分子へパリン | FDP、Dダイマー、TAT、SFなど | APTT(常用量では延長しない) |
ダナパロイド | FDP、Dダイマー、TAT、SFなど | APTT(常用量では延長しない) |
ワルファリン | F1+2、Dダイマー、TAT、SFなど | PT-INR(通常2.0〜3.0)(※1) |
新規経口抗凝固薬 | F1+2、Dダイマー、TAT、SFなど | PT、APTT(※2) |
アスピリン(※3) |
な し | な し |
TAT:thrombin-antithrombin complex(トロンビン-アンチトロンビン複合体)
SF:soluble fibrin(可溶性フィブリン)
F1+2:prothrombin fragment 1+2(プロトロンビンフラグメント1+2)
(※1)
APTTが1.5〜2.0倍に延長していても効果を発揮しているとはかぎらない。
APTTが過度に延長している場合には出血のリスクがあると考えるべきである。
APTTが1.5〜2.0倍の状態でかつ効果判断のマーカーをチェックしたい。
PT-INRについても同様に判断する。
(※2)
新規経口抗凝固薬(NOAC):
ダビガトランはAPTTの方が延長しやすい。
イグザレルト、エドキサバンはPTの方が延長しやすい。
アピキサバンはいずれも延長しにくい。
ただし、用いる試薬によって感受性が大きく異なるため注意を要する。
いずれのNOACともに内服2〜3時間後に血中濃度がピークとなるが、そのポイントでのPT、APTTの延長が想定範囲内であることを確認する。
万一、トラフでのPT、APTTが明らかに延長していれば出血のリスクがある。
(※3)
アスピリンなどの抗血小板薬のモニタリングは研究室レベルではいくつか試みられているが、臨床の場で簡便にチェックできるマーカーはない。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52| 抗凝固療法