金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年12月21日

無症候性後天性第V因子インヒビター

論文紹介です。

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クロスミキシングテスト


抗菌薬投与後に生じた無症候性後天性第V因子インヒビター」

著者名:金城泰幸、他。
雑誌名:臨床血液 55: 2311-2315, 2014.

<論文の要旨>

第V因子インヒビターは稀な疾患であり、発症の誘因や重症度が症例により大きく異なり、手術で使用するフィブリン糊が原因となることが多いです。

今回著者らは、誤嚥性肺炎の治療目的で使用した抗菌薬によると思われた後天性第V因子インヒビターを経験しました。


症例は80歳代、男性。

既往歴には心房細動、脳梗塞と腰部脊柱管狭窄を有していました。

誤嚥性肺炎の治療後に凝固能異常となり入院となりました。


凝固能検査ではPTとAPTTの異常な延長を認めました。

脳梗塞の再発予防のワーファリン投与中であったため、これを直ちに中止しビタミンKを投与しましたが、延長したPT、APTTは改善しませんでした。

クロスミキシングテストでインヒビターが示されたため検索したところ、第V因子の著明な低下とベセスダ法で第V因子に対するインヒビターを検出し、後天性第V因子インヒビターと診断されました。 

出血症状がなかったため経過観察していたところ、8ヶ月後にPT、APTTは自然に正常化しました。


原因不明ですが、後天性FVインヒビターは約半数の症例で無治療にて自然消失することが確認されています。

一方、致死的な出血傾向を示す場合もあります。


本症例は誤嚥性肺炎を繰り返していましたが、出血症状も認められないことから凝固検査と出血傾向の注意深い経過観察を行いました。

基礎疾患や患者の状態により治療を開始できない場合もあります。

約70%の後天性FVインヒビター症例で出血傾向を示しますが、出血傾向を認めない症例も存在します。

その理由として、血液中の第V因子が低値であっても、血小板内に存在するFVがインヒビターによる捕捉を免れて作用しているためと考えられています。


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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07| 出血性疾患