金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年12月26日

第XI因子欠損症:抗凝固薬開発のヒント

論文紹介です。

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「ヘパリンを使用せずに血液解析を行いえた重症の第XI因子欠損症」

著者名:Takamizawa Y, et al. 
雑誌名:Blood Coagul Fibrinoysis 25: 898-899, 2014.

<論文の要旨>

先天性第XI因子欠損症は、血友病A&Bと比較して出血症状がみられにくい稀な血液疾患です。

第XI因子は、近年新しい抗凝固薬を開発する上でも大変注目されています。


著者らは、59才男性、慢性腎不全の症例を報告しています。

動静脈シャント術の術前検査でAPTTの著明な延長が確認されたことが発見の契機となり、最終的には第XI因子欠損症と診断されました。

透析を開始して6ヶ月以上経過しましたが、体外循環回路の凝血塊は確認されていません。


特筆すべき点としては、この症例(第XI因子欠損症)は透析中に抗凝固薬が使用されていないことです。

また、APTTが120秒以上に延長して第XI因子が3%以下に低下した腎不全症例であるにもかかわらず、出血症状は全くみられませんでした


以上、第XI因子欠損症は、透析においてヘパリンに匹敵するような抗凝固作用を発揮するものと考えられました。



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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:45| 出血性疾患