金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年02月13日

医師国家試験:播種性血管内凝固症候群(DIC)

本年の医師国家試験の紹介です。
解説もつけたいと思います。

播種性血管内凝固〈DIC〉でみられるのはどれか.2つ選べ.

a PT延長

b APTT延長

c 血小板増加

d 赤血球増加

e 白血球減少



解説

a 播種性血管内凝固(症候群)(DIC)では、基礎疾患の存在下に全身性持続性の著しい凝固活性化をきたし、微小血栓が多発します。微小血栓の多発に伴い血小板や凝固因子といった止血因子が消費されて、いわゆる消費性凝固障害の病態になります。進行例では、ほとんどの凝固因子が低下するために、PTやAPTTが延長します。

b 同上。ただし、相当に進行したDICを除くと、APTTはあまり延長しないことが多いです。早期のDIC症例ではAPTTがむしろ短縮することもあります(活性型凝固因子の存在のため)。管理人は不適切な選択肢と思います。

c 進行したDICでは、血小板数は低下します。

d DICに伴い出血がみられる場合には、貧血が進行する場合があります。

e DICと白血球数は直接には関係ありません。ただし、造血器悪性腫瘍や敗血症に合併したDICでは、白血球数が低下することもあります(ただしDICのためではありません)。



<DICの臨床検査所見(旧厚生省DIC診断基準に含まれる項目)>

1.基礎疾患の存在.

2.出血症状の存在.

3.臓器症状の存在.

4.血小板数の低下

5.血中FDP(Dダイマー)の上昇

6.血中フィブリノゲンの低下
7.プロトロンビン時間(PT)の延長(進行例でのみAPTTの延長もみられることあり)

<その他の重要な検査所見>

1.    アンチトロンビン (AT)の低下:消費性凝固障害の一環として、活性型凝固因子と1:1結合。
2. プラスミノゲンの低下、α2プラスミンインヒビター(α2PI)の低下。消費性凝固障害の一環として、二次線溶に伴い消費されます。特に、線溶亢進型DICの典型例では、α2PIは著減します。
3. トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、可溶性フィブリン(SF)の上昇。
4. プラスミン-α2PI複合体(PIC) の上昇。特に、線溶亢進型DICの典型例では、PICは著増します。


<DICの病型分類>

線溶抑制型DIC
:敗血症などの重症感染症。臓器症状がみられやすいです。

線溶亢進型DIC:急性前骨髄球性白血病(APL)、大動脈瘤、巨大血管腫、前立腺癌など。出血症状がみられやすいです。

線溶均衡型DIC
;固形癌など(ただし一部の癌は線溶亢進型DIC)。進行例を除くと、出血症状、臓器症状とも比較的みられにくいです。

 

正解

a, b

 
  <リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学
 
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43| 医師国家試験・専門医試験対策