金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年02月12日

医師国家試験:出血傾向

本年の医師国家試験の紹介です。
解説もつけたいと思います。

出血傾向と疾患の組合せで誤っているのはどれか.

a 下肢の点状出血・・・・・・特発性血小板減少性紫斑病

b 関節内出血・・・・・・血友病A

c 口腔内粘膜の紫斑・・・・・・再生不良性貧血

d 歯肉出血・・・・・・急性前骨髄球性白血病

e 鼻出血・・・・・・赤芽球癆



解説

a 特発性血小板減少性紫斑病では、点状出血(petechiae)が特徴的です。血小板に原因があるときの出血症状として、点状出血は重要所見です。

b 関節内出血といえば、血友病です。国試レベルであれば、1対1対応と言って良いでしょう。血友病A&Bともに、関節内出血、筋肉内出血などの深部出血が特徴です。ただし、後天性血友病(第VIII因子に対する自己抗体が出現)では、何故か関節内出血はみられず、皮下出血や筋肉内出血が特徴的です。

c 再生不良性貧血では、血小板数が低下して、皮膚や粘膜の点状出血、鼻出血、歯肉出血、紫斑などがみられます。

d 急性前骨髄球性白血病(APL)では、播種性血管内凝固症候群(DIC)が必発です。線溶亢進型DICのため、出血症状が顕著です。鼻出血、歯肉出血、紫斑などがみられます。

e 赤芽球癆では、赤血球数は減少しますが、白血球数と血小板数は正常範囲にあります。



正解

e



【疾患に特徴的な出血部位】




1)関節内出血:少なくとも医師国家試験で「関節内出血」のキーワードが出れば、血友病A&Bのみを考えれば良いでしょう。

2)筋肉内出血:血友病や、後天性血友病(第VIII因子インヒビター)でみられやすいです。



3)粘膜出血:具体的には、鼻出血、歯肉・口腔粘膜出血、消化管出血、血尿、女性性器出血などです。鼻出血は片側性の場合には耳鼻科疾患の可能性がありますが、両側性の場合には、出血傾向と考えます。「幼少時から鼻出血がみられやすい」場合は、von Willebrand病を強く疑います。



4)四肢末梢(特に下肢)の左右対照性紫斑:アレルギー性紫斑病(Schoenlein-Henoch紫斑病)に特徴的です。若干膨隆して触知可能なことが多いです。腹痛、関節痛、腎障害(IgA腎症)を伴うことがあります。



5)臍帯出血:先天性第XIII因子欠損症。

6)老人性紫斑:老人で前腕伸側、手背に赤紫色で境界明瞭な紫斑が出現します。しばしば部位を変えて出没します。ただし、全ての凝血学的検査は正常です。



7)タール便(黒色便):上部消化管(胃、十二指腸など)からの出血を意味します。


なお、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP)は、近年は免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia: ITP)ともいいます。

略称はどちらであっても同じです。

今後、後者で国試に出題される可能性もあります。

 
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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 22:34| 医師国家試験・専門医試験対策