金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年09月02日

フィブリノゲン製剤の安全性

論文紹介です。

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フィブリノゲン製剤の安全性:27年以上の市販後調査の解析」

著者名:Solomon C, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 113: 759-771, 2015.


<論文の要旨>

止血剤としてのフィブリノゲン製剤の使用に関しては、その検討が増えています。

著者らは、Haemocomplettan P/RiaSTAPの市販後調査期間中に生じた薬物副作用(ADRs)の自主的な報告について評価して、また文献として報告されている安全性情報をまとめました。

CSLベーリング市販後調査データベース(1986年1月〜2013年12月)に基づいて分析されました。

同期間中に発表された臨床研究のレビューも行いました。


その結果、フィブリノゲン製剤は上記期間中2,611,294g流通したことが明らかになり、1回4gの標準量を使用したと仮定すると、652,824回投与されたことになりました。

106症例で383回のADRsが報告されました(24,600g投与につき1回、または標準量使用の場合6,200回の投与につき1回)。

特記すべき点は、過敏性反応の可能性が20例(130,600gまたは32,600回投与につき1回)、血栓塞栓症の可能性が28例(93,300gまたは23,300回投与につき1回)、ウイルス感染症が示唆された21例(124,300または31,000回投与につき1回)が報告されていたことです。


ウイルス感染症が示唆されたうち1例では不十分なデータのために解析できませんでしたが、その他の例ではPCR法などにより因果関係は否定されました。


公表された論文からも、類似した安全性のプロフィールでした。


以上、市販後調査でのADRsは過少報告されやすいことに限界があるものの、フィブリノゲン製剤は多くの疾患で使用されているもののADRsはほとんどなく、血栓塞栓症の発症率も少ないと考えられました。

フィブリノゲン製剤は、十分に安全なプロフィールを示していると考えられました。



<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39| 出血性疾患